打ち切り漫画の世界に転生したけど毎週が急展開です〜一週間ごとに世界の終わりの危機が来るって何事なの!?〜
芳乃 玖志
最終話 バッファローで突き抜けろ!
東堂には三分以内にやらなければならないことがあった。
すなわち、目の前に迫った崩壊の危機から世界を救う事である。
「くそっ、なんでこの世界には毎週のように滅亡の危機が訪れるんだよ!」
この世界に共にやってきたオカがぼやいている。
そんなの、当然知っているはずだ。
「人気が無かったからですね」
「知ってるよ!」
東堂とオカは、ともに現代日本で生まれ、幼馴染として育ち、そして下校中にトラックに引かれた結果、二人揃ってこの世界にやってきたごく普通の高校生だ。
二人は神様の手違いとやらで死んでしまったらしく、その補填として異世界に転生して新たな生を謳歌させてくれるという話だったのだが。
「異世界転生って聞いた時にはちょっと心が躍ったのによ!」
「転生する世界を選ばせてはくれませんでしたからね」
「だからって!打ち切り漫画の世界に転生させることあるか!?」
そう、二人が神様によって転生させられたのは、元の世界で二人も読んでいた「スペーシング・シュガー
最初こそ、原作の知識があるし神様に貰ったチート能力もあるから好き勝手やりたい放題だな!と二人は楽しく過ごしていたのだが、すぐに問題に気が付いた。
すなわち、この世界には続きがない。
「そろそろ現実と向き合いましょう。今回の世界の危機は、バッファローです」
「なんなんだよ!全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが世界を薙ぎ払うから滅亡するって!」
「
続きがない世界がその後どうなるか?簡単だ、終わりがやってくる。
最初は、いわゆる黙示録の騎士だった。
二人が転生後の世界を謳歌している間に、世界が漫画の打ち切られた時間軸まで進んでしまったのだ。
その結果、四体の騎士が現れた。馬に乗ったその騎士たちは、それぞれが≪戦争≫≪飢餓≫≪疫病≫≪死≫を司っており、世界の人々は惨たらしく死んでいった。
だが、神様にチート能力を貰った二人と比べると普通に弱かった。
世界に終わりをもたらす四騎士は、異世界からやってきた二人によって倒されたのだ。そう、世界は救われてしまった。
「しかし、まさか世界の危機が一回じゃないなんて思いませんでしたね」
「原作者様は何が何でもこの世界を終わらせたいみたいだからな!」
そう、黙示録の四騎士を退けた後も、毎週のように世界の危機が訪れていた。
ある時は巨大なクジラが世界を呑み込もうとし、ある時は大量の蟲が世界を喰らいつくそうとし、ある時は隕石が降り注いで世界を破壊しようとした。
そして、その度に二人はその危機を乗り越えてきたのだ。
「週末ごとに終末が来るなんて、センスがないギャグです」
「世界がそんなセンスだから打ち切られたんだろうよ!」
などと軽口をたたいている間に、バッファローの群れは目の前まで来ていた。接敵までおそらく一分もない。
このままでは、二人も世界と一緒に薙ぎ払われてしまうだろう。
「さて、オカは下がっていてください。これくらいは僕一人で十分です」
「あ?なんでだよ、こんな世界と神様には鬱憤が溜まってるんだから俺だって暴れたっていいだろ!」
「相手は概念的バッファローです。オカの得意な真正面からの暴力では薙ぎ払われて終わりです」
「はぁ?俺がバッファロー如きに薙ぎ払われると思ってんのか!」
オカが怒った様子で東堂に詰め寄る。
「いえ、負けるとは思っていませんが、それでも少しは手こずるでしょう。だから、こういうのが得意な僕に任せてほしいんですよ」
「確かに、お前の方が得意かもしれないけどさ……でも、お前って俺が戦うのは毎回止めるじゃないか」
「一応僕も男ですからね、無理なときはともかく可能なときには好きな女の子を守るくらいはしたいんですよ」
「なっ!」
オカが顔を真っ赤にして離れる。それを見て、東堂は愉快そうに笑う。
「ふふっ。相変わらず、不意打ちには弱いですね」
「う、うるせえ。分かってやってるからお前はたちが悪いんだよ」
ぶつくさと文句を言いながらもオカはバッファローの群れから一歩離れる。
「そ、そこまで言うならお前に任せてやるよ!でも、少しでも無理そうだと思ったらすぐに加勢するからな!」
「大丈夫ですよ、まだ来週もその先もあるんです。お互いになるべく力を温存はしたいですからね」
「あぁ、分かってる。俺たちの戦いはまだまだ続くからな!」
突撃してくるバッファローと相対する東堂を見守りながら、オカは声高く叫ぶのだった。
――――完!!
打ち切り漫画の世界に転生したけど毎週が急展開です〜一週間ごとに世界の終わりの危機が来るって何事なの!?〜 芳乃 玖志 @yoshinokushi
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