第四審 死化粧

 裁判の日、早朝に私の部屋のドアが叩かれた。

 幸い、私は緊張で眠れていなかったので、軽く返事をしてからドアを引いた。

 しかし、ドアは音を立てるだけで開かない。

「…そっか。押し戸だ」

 実際、この間違いはもう何回目かだったのだが、これだけは何故か何度間違えても学ばない。

「今開けるね」

 先ほどの考えを一度頭から振り払い、私はドアを押す。

 そこにはアタシが立っていた。

「どうしたの。こんな時間に」

 私がそう聞くと、アタシは困ったように目を伏せた。

 空にはまだ、少し星が瞬いている。

「お前が私の罪を許すとは思えない」

 突然、彼女はそう言った。

 私が驚いて固まっていると、アタシはハッと顔を上げ、そしてまた俯いてしまう。

「…私には分からないよ」

 それを聞いたアタシは、私から目を逸らして小さく頷く。

 どうしたのだろう。彼女らしくない。

 朝焼けが窓から差し込む。しかし、私の影が邪魔をしてお陰でアタシの顔が朝焼けに照らされることはなかった。

「…安心しろとは言えないけど、反省してるのならいいことだよ」

 私はそう言い、「もう少し寝なよ」と戸を閉めた。

 その後の言葉が思いつかなかったから、など口が裂けても言えない気がする。


【死化粧】


 傍聴席で二人が不思議そうに首を傾げている。

「アタシちゃんは?」

 その問いはもっともだった。

 私だって疑問に思っているのだ。

 裁判が始まる時間だと言うのに、証言台もとい法廷にはアタシの姿がない。

『炎谷与太子が来ねえと裁判は始められねえんだがなぁ。無理矢理連れてきてやろうか?』

「ダメ。乱暴しないで」

 私が釘を刺すと、マワリヤサマは黙り、トランシーバーも動かなくなる。

 しかし、しばらく待ってもアタシは本当に来ない。

「…仕方ないか」

 そう呟き、私は後ろを振り向く。

 モニターの窪みには、きちんとカセットテープが嵌め込まれていた。

「ねぇマワリヤ」

 私はトランシーバーを口に近づけ、カセットテープに目を向けたまま尋ねた。

「本人がいなくても裁判は始められるの?」

 トランシーバーは何も言わずに一度振動した。おそらく肯定ということだろう。

『ま、本人の弁明は聞けねえがな』

 私は頷く。

 すると、それが引き金となったかのように、法廷内にけたたましい鐘の音がわんわんと鳴り始めた。

 鳴り響く鐘の音に、やけに大きいマワリヤサマの声が混ざる。

『では、裁判を始める。被告人番号05、炎谷与太子』

 アタシの名前が呼ばれたことに呼応してか、徐々に鐘の音はフェードアウトしていく。

 その時、かすかにノアの呟きが聞こえた気がした。

「僕の裁判の時も、勝手に始めてくれたらいいのに………」

 鐘の音が止んだ直後、法廷の灯りはパッと消えた。

 しんと静まり返った部屋に、マワリヤサマの低い声が反芻する。

『カセットテープを開示する。タイトル「死化粧」』



 自分は、まだ幸福な部類の人間だと思っている。

 仲の良さげな夫婦のもとに生まれ、愛を捧げられて育った。

 生まれた場所さえ違っていたら、私は本当の意味で幸せだっただろう。

 からからと夕凪が笑っている。

 夕凪は風が吹いていないことを言うのに笑うという表現はおかしいと、昔誰かに言われた気がした。

 部活が終わった数人の中学生が自転車のペダルをくるくる回して土手を走っている。

 目の前の川はさらさらと流れ、所々にきらきらと夕陽を写している。

 この田舎のこの川沿いは、唯一私が心を安らかにできるお気に入りの場所だった。

「絵蘭にぃさんなにやってんの〜!!!」

 土手を通る中学生の一人が、私を見るなり声をかけてくる。

 あいにく、私のする返事は一通りだけなのだが。

「特に何もー。気ぃつけて帰れよー」

 軽く返す私の声に波の音が落ちる。

 私がそう言うと、中学生は「はーい」や「わかった」、「ばいばーい!」など、明るい返事をして去っていく。

 そして、決まってまた静けさが訪れる。

「…私もそろそろ帰んないとな」

 そう呟き、しばしオレンジ色の川を眺める。

 私の日常には"学校"友人""恋人"などは存在しておらず、あるのは近所の子供と家族、そしてこの自然の風景。

 それが私の世界の全てだ。生まれた時からこうだった。

 しかし、心の片隅には「解放されたい」という気持ちもあったのかもしれない。



 私の家は、この宗教観念が濃く色づいた村にある大きな神社だ。

 そこの一人娘として生まれた私は、家族諸々に将来への強い希望を抱かれていた。

「私は巫女として、親が選んだなんかいい感じの男と結婚するんだろうな」

 程度にしか私は自分のことを考えていなかった。

 全部、親が決めてくれるのだと思っていた。

 そうしてぼーっと時が進むのを待っていると、突然、部屋の障子の外から声が聞こえた。

 耳を立ててみると、それは使用人がひそひそと内緒話をする声だった。

「…して…こんな………」

「お父様は………決断………」

「…嬢様……可哀想に…」

 嬢様と言うのは、紛れもない私のことだ。

 私は急いで部屋の隅から、なるべく音を立てないように障子へ駆け寄り、ぴたりと耳を当てた。

 先ほどより、会話が鮮明に聞こえてくる。

「神への生贄に嬢様を選ぶなんて…」

「お父様もどうかしてらっしゃる……」

「お母様はどうして反論しなかったの……」

「哀れな嬢様…」

 その会話を聞き、私はへなへなと床にへたり込んでしまう。

 この神社では代々、"神様への生贄"として一年に一回村の女性を捧げ、その死体を祭壇に祀っていた。

 この神社…炎谷神社に祀られている神はそれはもうひねくれた猫神だそうで、好きなものは人間の血肉と若い女。他の場所でも悪霊を祀ることはあるが、それにしてもこいつは大概だ。

 しかし、問題はその生贄だ。

 そして障子の外の使用人の話を聞くに、今度の生贄は私だと言う。

 …どうして?

「私は親に愛されて…」

 その晩は眠れなかった。

 次の日の朝、使用人達は改めて"私が生贄となる"事実を伝えにきた。

 私は泣きも叫びもせず、冷静を装っていた。

「…嬢様。儀式は四日後です。それまでは自由に過ごすようにと、お父様からのお言葉でございます」

 金髪の使用人はそう言った。彼の無機質な宝石のような目が、まっすぐに私のことを射抜いていた。

 その隣で、黒髪の少年がちらりと彼の方を見て、慌てたように私に向き直る。

「…お、お父様は、神聖な儀式だから反論は許さない、とのことです」

 話を聞き届けて、私は「わざわざありがとう」と返事をした。二人は、その的外れな返答に不思議そうな顔をした。

「出ていい。ご苦労様だ」

 そう言い、私は二人を半ば追い返すように部屋から出した。

 そして、彼らがその場から去ったのを確認すると、顔を覆って呟いた。


「…嫌だ、死にたくない」



 1日目、私は外を練り歩いた。

 村を出てしばらく歩くと、道にぎらぎらと光る金属の物体が走っているのが見えた。

「……車か」

 そう気づくのに、しばらくの時間がかかった。

 あの村で、少なくとも車を持っている者は居ない。私だって家にあるおんぼろなテレビでしかその存在を知らなかった。

「凄い。大きいんだな」

 車通りの多い道は危ないかと判断し、私は迂回して別の細道をぶらぶらする。

 途中の店で菓子を買った。それは甘くて冷たくて、突然口の中で溶け始めることだから大層驚いてしまった。

「お嬢ちゃん、この辺は初めてかい?」

 その店の人の良さそうな店主らしき男が、そうにこやかに尋ねてきた。

 私は一度こくりと頷き、しゃりっと持っていた菓子をまた齧った。

「あぁ。村から散歩に来た。外はすごいんだな」

 私は、何気ない質問だと思って答えた。

 しかし私がそれを答えた瞬間、優しそうだった店主の顔とは一変、彼の顔は鬼の形相に変化した。

「アンタ…あの村の住人か………?」

 私はわけがわからず、「そうだがどうした」と答えた。

 

 途端、左頬に訳のわからぬ激痛。


 驚いて頬を抑えると、そこがじんじんと熱を帯び始めるのが分かった。

 この感覚を私は知っている。

 恐る恐る店主の方を見ると、彼は右手を構えていた。

 間違いない。

「っ…なんで」

 私はこの男に頬を打たれた。

 ぎゅっと頬を抑えると、またそこは熱く煮えたぎり始める。

 天主は困惑する私に背を向けて、さっさと店の奥へ消えていった。

 早く去れ、と言葉を残して。


 暗くなり、ふらふらと家に着いた私は、心配した様子の両親にぎゅうと抱きしめられた。

 おいおいとなく二人を見て、私は無機質に考えていた。

 「あぁ、私はこの人たちに殺されるんだな」、と。


 次の日、私は部屋から出られなかった。

 昨日のあれは多分、俗に言う「部落差別」たるものなのだろう。

 外に出てもあのような仕打ちをされるなら、早くここで生贄になった方がいいのやもしれぬ。私はそう考えていた。

「でも、死にたくはない」

「しかし、外の世界でも邪険にされる」

「死ぬのは痛い。嫌だ」

「生きていくのは辛いだろう」

 そんな思考が、私の脳に渦巻き続ける。

 一生こうしてだらだらと、無駄なことを考えながら暮らしていきたい。

 安息を得たい。誰にも邪魔されず、一人静かに、何もせずに生きていきたい。

「家族にも縛られず、というか、家の関係者は誰もいなくて………」

 そう呟いた瞬間、私の思考はある一点に固まった。

 その結論は簡単すぎて、私の頬からは笑みがこぼれてしまった。

 やはり、私は心のどこかで解放されたいと思っていたのだろう。

 それからの時の流れは早かった。

 


 私は集まった多くの人々の前で吊し上げられ、殺される。

「今までお疲れ様でした」

 金髪の使用人は、やはり興味なさそうに一礼した。

 しかし、今の私はそんなもの、強まる高揚感にかき消されて毛ほども気にならなかった。

 私が台に上がった瞬間、観客からはぱちぱちと拍手が巻き起こる。

 この時を待っていた。

 私は神主…父親に体を向け、服に隠してあったものをすらりと取り出した。

 観客はまた盛り上がった。

 甲高い歓声を上げ、その中には席を立ち上がる者も居た。

 倒れた人々の顔や、荒らされる会場を華やかな赤色が彩ってゆく。

 それはまるで死化粧で。

 とても美しいのも事実だった。




『カセットテープの開示を終了する』

 マワリヤサマがそう告げた瞬間、傍聴席に座っていたコースケは勢いよく立ち上がり、そして足早に法廷を出ていった。

「…どうしたんだろう」

 私がぽつりと呟くと、ノアは耐えかねたように「ふぐっ」と奇妙な声を出した。

「え。なに」

 奇妙に思って尋ねると、ノアはもう無理だと言うふうに顔を上げ、そのままけらけらと笑い始めた。

「いや、不謹慎かもしれないけどさ。アタシちゃんのテープ、最後の方振動多かっただろ」

 彼女は笑いを含みながら続ける。

「画面酔いしたんだって」

 本当に不謹慎だな、と私が言うと、ノアはごめんごめんと平謝りをしてきた。

 そしてしばらく待つと、コースケは何事もなかったかのように法廷の扉から入ってきた。

 …肩にアタシを担いで。

「離せ!私が居なくても裁判はできるんだろう!!」

「本人居なきゃ裁判ってカンジしないし、てか何法廷の前うろついてんですか嬢様」

「だっ、だって…!!!」

「だってじゃない。ずっと居たんでしょ」

 私はその光景を見てぽかんとだらしなく口を開けてしまう。

 コースケに人を担ぐような力があったことにも驚きだが、アタシが実はずっと法廷の前に居たことにも驚きだった。

「あ、アタシ……」

 ぽつりと呼びかけると、アタシはびくりと肩を震わせて顔を背けた。

 それを見て、コースケは空気を読んだようにアタシを肩から下ろした。

 彼は肩を回しながら傍聴席に戻っていく。

「居たなら言ってよ………」

「うっ…」

 アタシはバツが悪そうに目を逸らす。

 法廷には微妙な空気が流れる。おそらく、俗世間ではこういう雰囲気のことを"気まずい"と言うのだろう。

 ルリカの時は、私はこんな空気さえも不愉快に思っていた。

 しかし、今はそこまで気持ち悪く思っていない。気持ちが冷静なだけかもしれないが。

「アタシ」

 私が先ほどと比べてはっきりと呼びかけると、アタシは先ほどよりも大きく反応した。

 私は、まっすぐに彼女を目で射抜く。

 映像の中の金髪の使用人____及び、コースケのように。

「どうして二人は関係を隠していたの?」

 アタシとコースケはちらりと視線を交わし合う。

 ノアは不思議そうに二人を見つめ、そのまた気まずい空気に腕をさすっている。

「…別に」

 コースケは言った。

「隠してたわけじゃないですよ。というか、お互いがお互いを避けてましたね」

 そして、一変した冷酷な目を、怯えるアタシに向けた。

「嬢様だって、殺した相手と話したくないでしょう」

 アタシはコースケから目を逸らす。

 しかし、冷たいことを言い放ったコースケ本人は、別に恨んだ様子もなく続けた。

「まぁ、俺はキョラ様の件もあって死にたかったから別によかったんですけど」

 私は顔を伏せて考えた。

 アタシがあの行動を起こさなければ、彼女は殺されて神の祭壇に祀られていただろう。

 しかし、いくら正当防衛とはいえ、その場にいた何の罪もない人間まで殺す必要はあったのか?

 いやしかし、彼らはアタシが生贄となることを好く思っており、それは見殺しと同じ行為で_______。

「………ごめん、アタシ」

 私は判決を告げた。

「……"分からない"」

 途端、鐘がわんわんと鳴り響き始める。

 アタシは顔を覆ってうずくまった。

「そうか、私は殺して欲しかったんだけどな」

 鐘の音が強くなった瞬間、彼女の姿はこの法廷から消えていた。

 そして、ぴたりと鳴り止む鐘。法廷には、いつしかぶりのうるさい静寂が訪れた。



「これでよかったのかな…」

 もはや恒例となってしまった、裁判後のコースケの部屋での時間。

 ノアは落ち着かない様子でティーカップを持ち続けており、コースケに「置いたらどうです」と指摘されていた。

「俺には分かりませんよ。嬢様にとっては思い通りじゃなかったみたいですけど」

 そう言い、コースケは紅茶を一口。冷めていない紅茶を格好つけて飲んだせいか、ティーカップを置いた後、静かに口元を抑えていた。

「やけどしたの」

「黙ってください」

 ぎろりと睨まれてしまったので、私は大人しく黙っておくことにする。

 すると、先ほどからそわそわとしていたノアが、小さく呟いた。

「…アタシちゃんも居なくなっちゃったし、僕の周りは寂しくなったね」

 それを聞き、部屋の空気はまたしんと静まり返ってしまう。

 そんな暗い雰囲気でも、差し込む光を受けた塵達は、部屋の中で舞踏会を開いている。

 滑稽な光景で、笑えてきてしまう。

『おい、ガキども』

 突然、部屋に低い男の声が響いた。

 それを聞いた私は、懐からトランシーバーを取り出して、机の真ん中に置く。

 その隣で、コースケとノアが「俺25なんですけど」「僕はもう20歳だよ」と反論をかましているが、マワリヤサマは気にせずに話を切り出そうとする。

 ふと、ノアの隣の誰も座っていない丸椅子がちらりと視界に入り、私は思わず目を逸らしてしまった。

『お前らにも一度心の整理が必要だと思ってな』

 マワリヤサマがそう言った、次の瞬間。

 突然部屋の電気が消え、窓がない右側の壁がぱっと照らされる。

 ロイの映像を自室で見た時と同じだ、と私は思う。

『お前らの情報を改めてまとめておいた』

 映し出された光の中には、被告人の顔写真と情報が書き込まれている。


01【放火魔】 音花郷楽(14) 158cm 男

  殺した相手:不特定多数 判決:有罪

  現世での安否:死亡済


02【虐待児】 淀川恋弼(25) 171cm 男

  殺した相手:音花郷楽 判決:無罪

  現世での安否:死亡済


03【いじめ被害者】 館山ルリカ(18) 175cm 女

  殺した相手:音花色葉 判決:有罪

  現世での安否:判決により死亡済


04【心中者】 四月一日ロイ(22) 178cm 男

  殺した相手:笠巻冥 判決:分からない

  現世での安否:死亡済


05【生贄娘】 炎谷与太子(19) 154cm 女

  殺した相手:不特定多数 判決:分からない

  現世での安否:存命


06【   】 柊延鴉(20) 166cm 女

  殺した相手:未開 判決:未決

  現世での安否:不明



「…ノアのことは全然分からないね」

 私がそう言うと、ノアは微笑んで「そうだね」と返事をしてくれた。

 まだカセットテープが開示されていないノアの欄は空白や「未開」「未決」などの文字が多い。

 果たして、彼女は何者なのだろうか。

「判決により死亡済……」

 ふと、ノアがそう呟いた。

 その言葉に、私の心はきゅっと締め付けられる。

 私が殺したんだ。

「……大丈夫」

 ぽん、と頭を軽く叩かれる。

 この感触は前にも感じたことがある。

 彼なりの慰めなのだろうか。だとしたら、本当に彼は不器用なんだなと思う。

「コースケ君…イケメン面すんなって………」

「え」

 ノアの恨みを込めたような声に、コースケは「そんなつもりないです」と言ってのける。

 そういえば、と私はコースケの顔をチラリと見る。

 1番初めの裁判の翌日、彼は持ち前の敬語も忘れて私に「もう俺に関わらないでくれ」と言った。

 今も彼の目は真っ黒に染まったままだが、私たちへの当たりは厳しくも何でもない。

 何というか、無気力なのだ。

 この世に何の執着もなく、適当に毎日を潰して過ごしている人間の顔をしている。

『夏雲時子』

 突然、マワリヤサマが私の名前を呼んだ。

『お前は何の罪も背負わず、ただ平凡に生きてきた女子高生だ。何の変哲もない、ただの人間』

 どうして急に罵倒されたのかが分からず、私は目に困惑の色を浮かべる。

 すると、そんな私とは裏腹に、マワリヤサマは落ち着いた声で告げた。

『お前は人殺しではない』

 ブツン、という重い音を立てて、トランシーバーとの通話は途切れた。

 そして、徐々に部屋に光が戻り始める。

「…何の気遣いなんだろう」

 どうやら、マワリヤサマもそこまで器用ではないらしい。

 ノアは先ほどのシリアスさも忘れて、いつもみたいにけらけらと笑った。

「はは、うちの男性陣は器用な奴が居ないね」

 

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