隣の奥さん

エピローグ

　娘の高校も決まり、息子もあと一年で高校を卒業し専門学校へ通うことを考え、通学や通勤に便利なところへ引っ越すことにした。この２～３年で増えてしまった荷物も相当なものだった。なるべく建物に響かないよう荷物を整理する。このアパートは住人の入れ替わりが多い。特に事故物件というわけでもなく、特に変な住人が居るというわけでもなく。ただ長く住めないなにかはあるのかもしれない。

　今度の新居は、１階の角で以前より一部屋多い３LDKだ。駅にも近く、名古屋まで電車一本で行ける。乗り換えがないのは、身体的にも精神的にもかなりのストレスが軽減される。今回の挨拶回りは隣と、２階だけにしよう。もしかしたら前回のように、挨拶回りは不要なアパートかもしれない。それでも、知らない顔をする勇気もない。

「105号室に越してきました、掛川（かけかわ）です。」

　103号室を訪ねると年配の女性が出てきた。夫婦二人で暮らしているのだという。近辺について尋ねると、

「昔はちょっと治安は悪かったけれども、今は全然そんなことないから安心していいといいと思いますよ。このご近所も…。多分、大丈夫だと思います。」

　女性はそういってニヤリと笑った。