ジーニと呼ばれて…

爆進王

ジーニと呼ばれて…

「ジーニ先輩、コピーできましたよ」


「ジーニ君、お疲れ様です」


「ジーニ、この前の書類はできたか?」



 俺の名前は『ジーニ』ではなく、立派な日本人としての名前がある。『ジーニ』とは俺のあだ名であり、小学生の時から続く俺の黒歴史…そのものだ。






 俺が小学六年生の時に行った学校行事の山の学習。クラスみんなでテントを張り一夜を過ごす。


 そしてお決まりの



「順番に好きな人の名前を言っていこうぜ!!」



 と言い出す奴がいた。


 みんな顔を赤くしながら、クラスメイトの女の子の名前を言っていく。


 そして俺の番になった。



「僕はたかし君のお母さんが好き!!」



 思い切って言った。言ったのだが…一瞬、テントの中は静まり返り、その後…大爆笑が起こった。



「……………」



 俺はその時はなぜ笑われているか分からず『キョトン』としていた。



「何を騒いどるんじゃあ!!」



 いきなり先生がテントを開け、怒鳴られた。


 静まり返る子供たち…。



「…クスクス…クスクス」



 真っ暗なテントの中で、押し殺した笑い声が聞こえる。



 そして次の日の朝には、俺はもう…『ジーニ』と呼ばれていた。


 野球が好きな人にはわかるかもしれないが、当時活躍をしていた外国人選手の名前からあだ名をつけられてしまった。その選手は親友のお母さんと結婚したと当時話題になっていたらしい…。


 男の子からは『ジーニ』と呼ばれ、女の子の中には『ペタちゃん』と呼ぶ子もいた。


 本当に恥ずかしかった。


 そしてどういう訳かクラス会議で『ペタちゃん』か『ジーニ』どちらのあだ名が良いかという議題で話し合いが行われてしまった。小学生らしいと言えば言えなくもないが、意味が分からなかった。


 何より悲しかったのが、たかし君が俺を警戒して、家に呼んでくれなくなってしまった事だった。






 俺は中学も高校も『ジーニ』と呼ばれ続けた。そして大学は地元を離れたので四年間は『ジーニ』と呼ばれなくなっていたのだが…。


 地元に戻って就職すると再び…。会社に同級生がいて、いつの間にか『ジーニ』というあだ名と理由が広まっていた。


 そして今でも『ジーニ』と呼ばれ続けている。


 これが俺の黒歴史。

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