ヘデラ絡む黒薔薇、白日に大輪を咲かせる

ソラ

第1話 黒薔薇の蕾

「ん、よく寝た……」

 そんなことを言いながら、私こと花輪はなわ 黒薔薇くろばらは目覚める。

「えっと……今何時だろ」

 時計を確認すると、六時。まだ始業まで二時間あるが、私は顔を洗い、この寮で一緒に暮らしている少女、花絡はながら 常春とこわのいる部屋に向かう。

「常春、起きて。 朝だよ。」

 呼びかけるが、起きてるのに出てこない。

「……起きないとキスしちゃうよ?」

 冗談でそんなことを言うが、出てこない。

「いや、え?」

 ……もしかして、私のこと好き––––?

「……まあ、これで起きるなら……」

 そういい、私が常春の布団の中に潜り込み、頬にキスをすると、出る気になったのか、目を開けた。

「黒薔薇、おはよー……」

「お、おはよう常春。」

 やばい、恥ずかしい。顔が熱くなっているのが自分でもわかる。だが常春は、そんな私の頬に触れてきた。

「えぁ、ちょ、ご飯作るから離して。」

「いいよ。」

 今の状態だと視界に常春の顔があるだけで恥ずかしさを感じてしまうため、一旦料理に没頭した。……まぁ、結局料理を作るのも常春に美味しい料理を食べて欲しいからだけど……。

「できたよ。」そういい、机に完成したオムライスを置く。

「「いただきます。」」

「やっぱり、黒薔薇の作った料理だけ他のとは違って感じる……。」

「ありがと。」……どうせお世辞だろう。私は普通のオムライスのように感じるし。

「すっかり黒薔薇に胃袋掴まれちゃったし、ちゃんと毎日ご飯作ってね?」

「? うん、もちろん。」

 そう返すと、常春の機嫌がよくなったように見えた。

 食後、私がテレビを付けると、ニュース番組があった。その途中、衝撃的なニュースを見た。

「えー、ただいまより婚姻法が改正されます。改正婚姻法は、十八歳以上の人であれば、『同性同士でも』双方の合意があれば結婚可能です。」

「ぅえ?」思わず、変な声が出た。

……まあ、学校行く準備しよ。


花園学園、中等部の一年二組。 ここが私と常春のクラスだ。

「おはよう、二人とも。 今日も一緒に登校か?」

そう声を掛けてきたのは、空神そらがみ あさひ先生、既婚者だが性別問わず生徒からの人気があり、先生がたからも信頼されている。

「「おはようございます、旭先生。」」

「はは、息ぴったりだな。」

「おはよう二人とも。 常春と黒薔薇はいつも一緒に登校してるな。」

この声は、天空あまぞら先輩、高等部二年で、この学校に通っている旭先生の妹の一人だ。……正直に言って、私はこの人が嫌いだ。

「あ、おはようございます天空先輩。 ほら、黒薔薇も。」

「…………」

「もー、なんで天空先輩は無視するのかなぁ。」

「だって、あの人常春とやたら距離近いじゃん。」

「近くない近くない。 それに、一番私と距離が近いのは、黒薔薇だよ? 私、黒薔薇居なかったら生きていけないから。」

「んぐっ、そんなこと言っても何も出ないよ?」

「黒薔薇がご飯作ってくれてるじゃん。 今日の朝もそうだし。」

「いやまあ、常春には美味しいのを食べて欲しいからご飯はちゃんと作るけど……。」

「はいはい、惚気はそこでお終いにしとけよ?」

「そんなこと言ってる旭先生が一番惚気てると思うんですけど。」

「そりゃ結婚して六年目だからね、逆に惚気ない方がおかしい。」

「……夫婦喧嘩とかしたことないタイプだこの人。」

「君らもしてないでしょ。」

「「誰が夫婦ですか、誰が!」」

「僕はお似合いだと思うけどね?」

「諦めろ、二人とも。 この馬鹿兄貴の矯正なんて嫁さん除いて誰にもできないぞ。」

「それはわかってるんですけど……。」

「ねえ黒薔薇、さらっと僕ディスられてない?」

「大正解ですよ、先生。」

「いや黒薔薇もディスってきた!?」

「やだなぁ、私が先生をディスるわけ無いじゃないですか。」

「常春、そう言ってるけど君さっきの天空の言葉に頷いてたじゃん。」

「……てへ?」

「か、可愛い……。 カフッ……。」

「えぁ、黒薔薇ちゃん!?」

常春ちゃん、可愛すぎ…………


『作者から』

僕初の恋愛ものです。 流行ってくれないかな……。

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