海水浴場で石を投げる少年

久石あまね

僕はドアホでした

  小学校四年生の夏休みに父と母と僕で沖縄に旅行に行った。

 初日はホテルのプールで泳ぎ、ホテルのゲームセンターでシューティングゲームをして遊んでいた。夜はバイキングで倒れるまで食べた。

 

 問題は二日目に発生した。


 ホテルのそばのビーチで僕は一人で遊んでいた。

 シュノーケルをしたり、ナマコを集めたりして、気づいたら海の石を集めたりしていた。

 そして何を思ったのか、なぜか集めた石を海に向かって遠投し始めたのだ。

 どれだけ遠くに投げれるかを試してみたかったのかもしれない。

 しかしここは海水浴場だ。人がいっぱいいる。

 当たり前だが、石を投げていい場所ではない。

 しかし僕は人がいない場所に向けて石を投げれば大丈夫だろうと思っていた。

 僕はとんでもないアホでした。

 そして背筋が寒くなる出来事がついに起きてしまいました。


 僕はサイドスローで投げて水切りと呼ばれる、石が海面でピュッピュッと跳ねて弾む遊びに転じていたときだった。

 調子に乗った僕は、思いっ切り腕を振って投げたら、思わぬ方向に投げてしまった。

 投げた石は猛スピードど飛んでいった。

 飛んでいった方向には、若いお母さんと抱きかかえられた赤ちゃんがいた。

 僕は終わったと思った。

 すると投げた石が突然カーブしてお母さんの左目の五センチ先を通過していった。

 当たらなくて本当に良かった。


 そして僕は謝罪をすることなく、卑怯にも走ってその場を逃げた。


 しかし僕は自分が恥ずかしくなったと同時になんとも言えない恐怖を感じていた。

 もし石が当たっていたら今頃自分は…。

 ニュースになって、僕は新聞にのり…。


 バクバクと暴れ出した心臓はなかなか落ち着かなく、冷や汗が溢れ出した。


 自分はとんでもないことをしていたんだとこのとき、やっと気づいた。


 しかし気づくのが遅すぎた。


 誰かに注意されないと何もわからない僕。


 自分の弱さ、未熟さ、幼稚さ、おぼこさ、全てが嫌いになってきた。


 しばらくしゃがんでいると、冷静になってきた。


 僕が投げた石はなぜ突然カーブしたのだろうか。


 僕は今では、あの石は何かの、大いなる力が加わって、お母さんと赤ちゃん、僕を護ったのだと思っている。


 神様がお母さん、赤ちゃんを護るために、石の軌道を変えたのだと思っている。


 そして神様は僕の人生も護ったのだと思った。


 お母さん、赤ちゃん、怖い思いをさせて本当にごめんなさい。


 反省しています。


 当たらなくて、本当に良かった。


 二度としません。

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