第2話 本編
それは私が高2のある夏の夜のこと
私は塾の帰りで自転車に乗っていました
その日は朝から曇っていて雨が降りそうな天気でした
私が商店街の近くを通った時に
ピシャッドーンと雷が近くに落ちたました
ビックリして短く悲鳴をあげ、自転車を止めて空をみると嵐のような雨がザァーと降ってきました。
私は急いで商店街のアーケードの中に入りました
ゾッとしました
そこは信じられないくらい真っ暗なのです
さっきの雷で停電になったとしても、アーケードの中がここまで暗くなるなんてありえません
時間は20時を少し過ぎたくらいです
夜とは言え、いつもなら人通りがまだある時間なのに誰もいません
豪雨の音が響くシャッターの落ちたアーケードは気味悪く
こんなにボロかったな?
まるで廃虚のようです
アーケードを抜けると駅前に出ます
バス停があるので、親に迎えに来てもらうかバスで帰ろうと思ったのです
商店街の中を少し進んだ暗がりに、人がいる気配がしました。
ホッとしたのもつかの間、十人以上の人が立っていました
老人ばかりで、みんな睨みつけてきます
どう見ても歓迎されていません
一人が大声を出しました
するとほかの人も続けて叫び出して
「何しに来たんや!」「帰れ他所者!」「盗っ人が!」「……は、やらん!」「帰れやボケ!」
聞き取れない部分もありましたが、だいたいこんなことを言っていました
わけが分かりません
盗っ人??私の事でしょうか?
それにさっきから足元が砂利道になっています。
商店街の中はタイルかレンガだったはずです
暗くて横の道に入ってしまったのでしょうか?
背後に気配を感じ振り向くと、そこにはさらに十人ほどの人がいました
彼らも何か叫びます
闇が広がるように迫っていました
いつの間にか私の顔のすぐ下で、小柄な白髪老婆がニタニタと笑い
数珠を握り私を見上げるようにして何かをブツブツ呟いていました
私は自転車に跨り、人の間をぶつかりながら来た道へと駆け抜けました
必要に追いかけて来ないので、追い出すのが目的のようです
後ろの方で「がぁーっ」と
たぶん老婆の叫び声がアーケードに響きました
土砂降りの中を無我夢中で走って帰りました
翌日から、風邪をひいて寝込みました
高熱が出て体が重く、食欲がないけど無理に食べても3日で体重が2キロも減りました
熱が下がっても体調不良は続いて、一週間で6キロも痩せました、心配した親が市内の総合病院に連れてってくれましたが、どこにも異常はありませんでした
お見舞いに来た部活の先輩はいわゆる見える人です
アキ先輩が言いにくそうに
「あなたのそれって…お祓いが必要じゃない?」
「お祓いですか?」
先輩の友達のお姉さんが、お寺の息子と付き合ってるとか。
そのお寺の息子さんを連れてきてくれると言うのです
住職にお祓いを頼むと料金が発生するらしいので、本当に必要か先に見てもらう事に。
お母さんがちょうど部屋に入って来て
お祓い云々よりも友達のお姉さんがお寺の息子と付き合ってる部分に興味を持っていました
お母さん食いつく所そこ?
2日後に来てくださる事になりました
私は体重が更に減り、ガリガリに痩せこけていました。
部屋がなんだか薄暗く見えて、夏なのに寒くてしかたありませんでした
お母さんは、お祓いに関係なく週明けに県外の大学病院へ予約をとりました
週末になりアキ先輩と
その友達のユウさん、姉のマイさん、その彼氏で寺の息子のナオさんが来ると連絡がありました。
何故かユウとマイの姉弟は外で待機して、ナオさんと先輩だけが部屋まで来ました
ナオさんめちゃめちゃイケメンです
そこら辺の俳優が芋レベルの神イケメンです。坊主頭のお坊さんが来ると思ってたのに髪の毛が普通にフサフサでした
開口一番に「どこに行ったらこんなんもらうんだ?」
先輩「あの?」
ナオ「呪われてるな…ボサボサ白髪ババァがニタニタ笑って手ぐすね引いてるぞ」
ギョッとして全身を悪寒が走りました
白髪のお婆さんはあの時の事だとすぐにわかりました。
呪われてるのも驚きましたが、老婆を言い当てられた事に恐怖を感じました
ナオ「呪詛返ししてやるけど、もうその場所に行くな」
「えっ!駅前の商店街です」
ナオ「じゃあ、たまたま繋がった穴に入ったんだな…んん?…あぁ…なるほどな」
ナオさんが私の今の状況を説明してくれました
あの商店街が、どこか異界に繋がっていて、運悪く私が迷い込んだと言うのです。
その昔、村人が旅の客人に宿を貸したら、家財を持ち逃げされ家に火をつけられた
その火は燃え広がり村の半分を焼いた
生き残った村人達が外部からの余所者を入れてはいけないとルールをつくり
そのルールはいつしかエスカレートし、追い払った他所者が二度と村に来ないように
呪詛師に頼んで他所者を呪い殺すようになった
あの時に見たおぞましい白髪老婆とその叫び声を思い出しました。
本当に呪いなんてあるのでしょうか?
私が呪われてるなんて信じたくなかった
ナオさんは呪詛返しをすると言っていました
私は助かるのでしょうか?
ナオさんはどこかに電話しました
「もしもし、マイちゃんもう来て良いよ」
『うん分かった』
ゾッと更に悪寒が走りました
部屋の暗さが増していくのです
ジワジワと部屋が黒くなり
私は震えが止まらなくなりました
先輩が手を握って「大丈夫よ」と声をかけてくれました
ナオ「へぇー、これが見えるのか。だいぶ危なかったんだな」
私の部屋は2階です
窓から外に出ようと必死にガリガリ引っ掻いて、ドンドンドンドン!って叩いている白髪老婆が
凄い形相で怯えて何か叫んでいます
ですが、それよりも怖い何かが近付いてくる
死神が階段を上がってくる
そんな圧倒的なプレッシャーでした
トントンと足音がします、何か話してるような声もします
窓に張り付いていた老婆の断末魔が聞こえ、闇にドロッと溶けました
そんな事より、ドアの向こうに死神がいる
頼みの綱のナオさんを見たら
私と目が合ったのですが口元が笑っていました、どう見ても楽しそうです
あっこれあかんヤツや!
私は涙を流して死を覚悟しました
扉が開きます、怖いのに目が離せません
先輩の手を強く握りました
鎌を持った死神を想像していたのですが入ってきたのは
この世の者とは思えない美しい死神でした
むしろこんな天使のお姉さんのお迎えなら私は天国行きやんか!
そんな事を考えていたら
後ろから、これまたイケメンが部屋に入って来ました。
知ってる人です、学校で有名な内藤ユウ先輩でした。
先輩「ユウ…それ何買ってきたの?」
ユウ「病人がいるって聞いたからコンビニでプリンとジュース買った。姉ちゃんの金で!」
マイ「良いのよ気にしないでね、紅茶のシフォンケーキ作ってきたの食べれそう?」
アキ先輩もナオさんも美人ですが、この内藤姉弟は超絶美人でした
美形が集まるこの部屋の空気が、まるで神域です。あれ?異世界の乙女ゲームですか?
私は這いつくばって拝みたくなりました
そして、シフォンケーキが食べたくて我慢できず
その場で起き上がり、受け取るとラッピングを破り捨て、手掴みで口へ
ボンクラ政治家の真似じゃないですが
後のことは記憶にございません。
アキ先輩から後に聞いた話しでは
私は泣きながらシフォンケーキを一心不乱に食べていたそうです
胸をつまらせて、マイさんに背中をなでてもらいながらジュースを飲ませてもらい
何個かあったプリンも全て完食して、泣きつかれてマイさんの巨乳にもたれて寝たそうです
そこから丸一日寝ていて
起きたときには、ここ数年で一番のスッキリ爽快な目覚めでした。
食欲も戻り違和感が消えて、信じられないことに減った体重が3日で元に戻りました。
一番の恐怖です!
あれから、お母さんや先輩と昼間の商店街を何度も通りましたがいつも通りでした
いえ、むしろ活気が溢れてました
あの時に見たボロい場所や砂利道を見つけることは出来ませんでした
だけど雨の夜に商店街を通るのは、なんか怖いので塾は車で送迎してもらってます
後日談―…
先輩「マイさん、なんか凄かったね」
死神扱いしてたとは言えず
「凄い美人でスタイルも良かったですね!最初は、あの世からの使者が来たのかと思いました。
所で内藤ユウ先輩と付き合ってるんですか?」
先輩「まだ付き合ってないから!」
ふぅーん、まだなんだ
仲良さそうに見えたし、付き合っちゃえばいいのに
先輩「あの後で、ユウ達と商店街を歩いたの。無害な浮遊霊まで逃げてたわ
何かがあった跡も、残らず消されちゃったのに、マイさん無自覚だったのよ!
『え?何それオカルト話し?』とか楽しそうに聞いてきたし!
あんたが一番のオカルトやわ!とか流石に言えんからね。
ナオさんは知ってて知らんぷりしてるし!
肝心のユウはオカルトに興味なさげだったし!」
あの人達いったい何なのよ!と憤慨してました
なんか解決したみたいです、知らんけど
私はあれ以来、変な違和感もなく、幽霊が見えたりもせず普通に過ごしてます
神秘の向こう側にいる人達は、美人が相場だと思い知りました
END
異世界に通じる商店街 ワシュウ @kazokuno-uta
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