とある大学生の悩み〜全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ

ライデン

第1話バッファローを数えるとか逆に眠れなくね?

 大学の2回生(法学部)たる俺には、3分以内にやらなくてはならないことがあった。


 いち早く眠ること。一日くらい寝不足でも構わないが、明日は大学の講議が終わってからも面倒なことをしなくてはならない。できれば6時間(本当は、7時間寝たいが)は寝ておきたいのである。6時間睡眠を確保できるタイムリミットまであと3分。


「バッファローが一匹、バッファローが二匹……」


 そこは、羊だろ!と思うかもしれないが……。


 友達がノリで買ってきたお土産が俺の部屋の机の上に飾ってあり、そのでかいシルエットがバッファローを猛烈に推しているのさ。インディアンの魔除けのお守り。〝バッファロースカル〟とかいうらしい。端的に言えば、水牛の頭蓋骨だ!


 それをアメリカで買ってきたの、マンションのお隣さん。大学の同期で同じサークルに入ってて、しかも女の子ね。

 そして、俺を寝不足にしている悩みの原因でもある。俺との仲はとてもいい。お互い一人暮らしなのに、普通にお互いの部屋に行き来して、2人で一緒にご飯も食べるし。


 付き合っているわけではない。あくまでとても気の合う友達。なんていうか、異性だけど一緒にいてありのままでいられるっていうか気楽っていうか……マブダチって言ってもいい。


 いや、真夏にカレーを常温で放置して腐らせたり、等身大のバッファロースカルを買ってくるセンスとかはちょっと、いただけないけど(苦笑)



 明日は、「サークルを辞めようかな?」とか言い出したそいつの悩みを同期のみんなで聞いてやろう会をするのだ。一限目からフルで講議を聞いたあと。滋賀学舎のやつらが来るのを待って。(俺達の学舎は京都)


 ちなみに俺達が入っているのは、ボランティアサークル。結構、伝統があるらしくてわけのわからないしがらみも多い。


 そのしがらみの一つが、主力と活動場所が噛み合ってない問題。


 具体的には、サークルの最大勢力は福祉学科の生徒ってこと。全サークル員の8割強が福祉学科。うちの大学の福祉学科は滋賀学舎なんだ。なのに、活動拠点は京都学舎。滋賀学舎の生徒は移動に時間がかかるゆえに京都学舎のサークル員に活動の責務をより負担しなければならないという暗黙のルールがある。


 で、2回生にもなるとその負担がどんどん増していくし、3回生になると幹部もやらされる可能性が増すわけで……。それが京都学舎のサークル員がボランティアサークルを辞める大きな原因の一つなわけ。


(この1年、お前が同期の中で活動に1番熱心で1番頑張ってたじゃねーか!その頑張りを無駄にするのか?)


(責任は重いけど、一緒に頑張れないのか?)


(他にやりたいことでも出来たの?)


(サークルから離れたら、俺達の仲も疎遠にならない?)


(俺達の関係って何? 男女の友情って存在するの?)


 ああ。あいつに言いたいこと、聞きたいことがたくさんありすぎる。


 どこまで言っていいの?

 いろんな考えがぐるぐるぐる頭を回る!


 バッファローは、「強さ」「勇気」を象徴するという。


(眠るために数え上げたバッファローの群れがサークルのしがらみも、うじうじした悩みも、全てを破壊し尽くして突き進んでくれたらいいのに!)


 そんなことを考える、午前2時前。





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とある大学生の悩み〜全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ ライデン @Raidenasasin

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