夏休み明けの朝
あやかね
本文
ゆいには三分以内にやらなければいけないことがあった。
今日から二学期。夏休みを経て少し成長した同級生たちとの再会。ある人は真っ黒に日焼けし、ある人は夏休みデビューをし、ある人は部活で大活躍していたりする。十人十色の彼らが再び一堂に会し、互いの成長を認め合う特別な一日だ。
ゆいは今日に備えてたくさんの準備をした。お肌の手入れは言わずもがな。髪を伸ばし、化粧を学び、勉強をたくさんした。男子は言うだろう。
「え、ゆい。なんか可愛くなってない?」
「あんなに綺麗だったっけ……」
「え、あの美人、ゆいなの?」
今に見ていろ猿ども! いつもいつも男みたいだとかおバカちゃんとか言いやがって! 生まれ変わったゆいを見て恋したって付き合ってやらないんだから!
失礼。つい口が滑りました。
昨夜は興奮して寝付けなかった。
ゆいは見違えるほど綺麗になった。男みたいだと言われていた髪を伸ばし、適当に済ませていたお風呂上がりの保湿をきちんとやり、目元だってぱっちり整えた。そのおかげで肌はつるつる、髪はつやつや、表情だって明るくなった。薄化粧を覚えたゆいに敵は無い。
初デートでピエロみたいだとケタケタ笑った元カレの
イケメンサッカー部の
赤の勝負下着はやりすぎ?
とにかく色々準備をしてきたこの夏休み。ゆいは鮮烈な夏休みデビューを果たすのである!
ゆいは鏡に笑いかけた。
この向こう側にいる美女は……ゆい!? ゆいってこんなに可愛いの!?
きゃ~~! ゆいの可愛さに男子が殺到したらどうしよう! え、付き合ってくれって? やだぁ~!
「うるさいわよー! 早く寝なさーい!」
…………。
ママはゆいの可愛さに気づいていないようだ。溢れんばかりの彼氏候補に囲まれたゆいを見て腰を抜かしてしまえ。
そんな昨夜だった。興奮しすぎたせいかようやく寝付いたのは午前二時。
「寝坊したー!」
起きたのは遅刻三分前だった。
夏休み明けの朝 あやかね @ayakanekunn
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