誘拐事件

もる!

誘拐事件

「ふんふんふん〜ふんふん!」

私には、かわいい娘がいる。

年は7歳。

小学一年生。

「あれ?そろそろ帰ってくる時間なのに。おかしいな・・・」

そう。学校からこの家まで、歩いていけば3分もかからない。

下校時間は、一時間前。

一時間も、友達と遊んでいる娘ではない。

電話を学校にかけてみたが、『帰りましたよ』と言われるばかり。

すると。

ピンポーン

「あ、はーい!」

「郵便でーす。手紙が届いていますよ〜」

「?」

「これです」

渡された紙には、

『娘は誘拐した。返してほしければ金を出せ』

と書かれていた。

そしてその下には、犯人の電話番号が。

「えっ・・・は?」

動揺と怒りで動き回る私を、宅配業者さんが、「してやったり」とも言わんばかりの顔で、ニヤニヤと笑っていた。

            ****************

「えっと、身代金は5000億よね・・・どうしよ・・・こんなお金ないよぉ・・・!」

私は友人に相談するため、電話する。

私のたった一人だけの友達だ。

「ねぇねぇ!娘が誘拐された!」

『はぁ!?やばいじゃん!』

友人の声は、なぜかいつもと違う声に聞こえた。

でも、電話越しの声といつもの声は違うらしいし、まあいいだろう。

「でさ、犯人は、5000億用意しろって言って手紙でもそんなお金用意できないんだよ〜!どうすればいい!?教えて!」

『分割払いすればいいんじゃない?』

「あっ!その手があったか!」

『んじゃ、切るぜ』

「うーい!」

そして、私は大急ぎで犯人に電話をかける。

「分割払いでいいですか!?」

『ああ。金をくれるならな。金がゲットできれば、それでいいんだ』

「じゃあ、今から100万円送ります!」

『よし、娘は返すぞ』

「ありがとうございますぅぅぅ!」

『た・・・・し・・・とは・・・・・・・・いってな・・・・・からな』

「え?なんて言いました!?」

プツン

「まあいいか。関係ないことかも」

そして、多分、宅配業者の人が、犯人だったんだろう。

だが、一時間たっても、一日たっても、娘は帰ってこなかった。

電話をかけても、『この番号は現在使われていません。もしくは・・・』という、お決まりの言葉が流れるだけ。

そして、一週間たったあと。

ピンポーン

「はーい!」

「お届け物でーす!」

私の目の前には、が。

「しっかり、届けましたよ。あと4999000000円、ありますから、ちゃんと振り込んでくださいね」

そう言って、そそくさと車に戻ってしまう。

「はあ、それは当たり前ですけど」

そして、家に戻る。

「この箱、むやみに重い!何が入ってんの?」

カッターで開けてみると・・・

その中には、「しっかり、お支払い方法と同じに戻しましたよ」と書かれた紙。

そして、もう一つ。

娘が・・・

いや、正確には、、入っていた。

(ああ、あのとき、なんで私、分割払いで払ったんだろ・・・)

呆然として、膝をつく私。

もしかして、あのときの友人は、犯人だったのかもしれない。

「ああ、ああああああ・・・」

娘が、生首の娘が、私をじっと睨んでくる。

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