小さな魔法使いの攻城魔法

一陽吉

今日もがんばるぞー!

 いい天気。


 六月の風を受けながら原っぱにはいい感じに草がはえてる。


 こんな日は寝っ転がって、お弁当を食べて、のんびりしたいよねー。


 でもいまはお仕事できてるから、きちんとしないとね。


「ジュニカ殿、お願いいたします!」


「は~い」


 伝令係の兵隊さんから連絡を受けて、わたしは魔法を発動する。


 十歳のわたしだけど、着ている魔導服は見習いのものではなく一級魔法使いのもの。


 つまり、職業としての魔法使いであることを意味してる。


 だからもう学校へ通うことはなく、大人に混じってお金を稼いでいる。


 魔法でお金を稼ぐには、病気や怪我の治療だったり、魔法具の販売や修理、街の警備をしたりするのが一般的だけど、わたしはちょっと違う。


 わたしは軍の人たちと一緒に魔物の集団と戦い、城の魔物を落としている。


「──さあ、異世界に住むバッファローさんたち、悪い悪い魔物さんたちを懲らしめてあげなさい!」


 わたしの号令ととも足元から広がった魔法陣が輝くと、異世界の魔獣であるバッファローの大群が一斉に現れ、塊になって走り出していく。


 その数、ざっと千頭。


 一体一体いったいいったいが飼っている牛みたいに大きいから重量感たっぷり。


 しかも思いっきり走ってるから足に伝わる地響きがもの凄い。


 そしてそのバッファローたちが目指すのは城の形をした魔物。


 切り出した石を積み重ねたできたような見た目の城型魔物は、他の魔物を住まわせて、その魔力を吸って生きている。


 だから放っておくと、ゴブリンなんかの魔物が数をなして強くなっちゃうし、城も大きく強固になって人間を襲うのに有利になってしまうから、それを阻止するためにも、早めにやっつけなきゃいけない。


 わたし、細かい魔法は苦手だけど、こういうドーンとやる魔法は得意だからね。


 街の兵隊さんが居住してる魔物を相手にしている隙に、バッファローたちが城の魔物へ突進して攻撃。


 頭から突っ込むその強烈な力で全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れは、あっという間に城を攻略してしまう。


 ゴブリンなら百体ほど収容できる小さめのお城は、元の形が分からないほどに崩れ落ち、役目を終えたバッファローたちも元の世界へと帰っていく。


 そんな力強いバッファローだけど、肉体には接触できない魔獣だから、住んでる魔物はやっつけられないのよね。


 もしできたとすると、吹っ飛ばして血や内臓を撒き散らす気持ち悪いことになるから、これでちょうどいいわ。


「お見事です! ジュニカ殿!」


「ふふ。ありがとうございます」


 毎回、恐れ入りました、て感じで言ってくる伝令係の兵隊さん。


 わたしも嬉しくなっちゃう。


 そして、攻城屋ジュニカの今日の仕事はこれで終了。


 帰ったらお花畑に水をあげなきゃね。

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