二〇七話 出立の日。呟いた「――」
四夫人たちには亀装鋼が云々は伏せたもののちょっと特殊な事情ができて実家、のような場所に一時帰国できるよう申請し、
そういった文面で文を新しくだしてお見舞いはまた
みな、戸惑いと恐れ、悲しみと迷いを
心配だ、ともいかないでとも言わず、ご無事でだとかもなく私を送ってくれた。その私は
――亀装鋼。
私は四夫人たちに見つからぬよう宮の裏手の小道に馬を用意してもらって出発する
「皇太子が昨日贈って寄越しおったぞ」
「そう。殿下が……なにを
「
「なにも
それはこの宮に仕えてくれているみなへの信頼であり、戸惑った様子でも
あるのは、なんだろう。
誰かの、殿下の役に立てるならなんでもする気持ちは壊れはしない。なにがあろうと奥底は
だから、殿下に見送り不要、と申しつけさせていただいた。あのひとのことだ。絶対なにかと理由をつけてくっついてくるつもりに違いない。私は、守られようと思わない程度には冷めているし、殿下の
それが、私なりの覚悟。あのひとの憂い顔を見たらきっと心の表面が揺らぐ。そうなっては自らに
私はちょっと
私は殿下の贈ってくれた外套を羽織り、こちらは久しぶりの
ふと、視線を感じた気がしてそちらに視線をやる。そこには立派な
でも、私は大切だからこそ気づかなかったフリをして馬の速度をあげさせ、一気に駆け抜けてもらい、
そこでようやく、私は馬の速度を緩めて顔だけ振り向いた。あの木がある一点を見つめて、唇がふ、と
「いって、参ります」
零した呟きに
呟いて私は馬を、今度は速足程度で進めさせてやる。白い毛が綺麗な馬は泉宝との戦で背を貸してくれたのではなく、どこぞの誰かさんが手配してくれたモノ、だそうな。
なんでも私に似合うだのどうこう。いや、私に
気があうなあ、雷天。私も今はなにかを言う気になれないしならない。早くも虎静のことが心配になってきたってどんだけだ。大丈夫だ。
さっといって、とっとと帰る。時間が、日にちがどれほどかかろうと必ず戻るの。
それが私の提示した交換条件。必ず、死んでも生きて帰ってきますからと訴えた。
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