二〇五話 冷たく、重い、食卓を囲み
殿下や陛下たちと同じように。一将軍だけでなく、
そうこうやっている間に
見かねた
「いただきます」
「
「殿下、いただきましょう。せっかくの食事が冷めては
「……。終わったら、話をさせてくれ」
「――……はい」
おい、どうした私。いつもの
こんなしおらしい、弱った姿や声などではダメなのに、わかっている。わかってはいるというのにどうしても声が張らないし、
だって、あいつらは、
あの
殿下、優しい方。温かいひと。いつも私を守ってくださる
カチャ、カチカチャ。食器と皿が
私はどうやら相当に衝撃を受けていて己の身に降りかかる
そんな神経細くない、と思っていた。なのに、実際の私は
悲しいよ。辛いよ。痛いよ。苦しいよ。喉をせりあがってくる悲哀が
「静、もうよいのか?」
「ん。さげてくれ」
「……そうか。うむ、そうしよう」
言って月は
沈黙。食卓の上が綺麗にされ、茶碗だけが取り残された卓上にもやはり会話はないままであり、そのまま重苦しい空気がただよっている。もう、どうしたらいいか不明だ。
なにもかも、わからない。それに決定権は私にないのは知れたこと。戦の回避が叶うなら私ひとりの身柄は安いと誰でもわかる。わかった上で理解を拒否する
どうしたらいい? どう
こういう場合、どう対処するのが正解だ。相手国、亀装鋼を叩き潰す、というのが手っ取り早く
いかに
それこそ同じように練度のある式使いがいなければ話、笑い話にもならないほどのモノとなる。私が、私自身が
「静、俺はお前を差しだすつもりは」
「私の自由は国より重いですか?」
「……それは、とても卑怯な例えだな」
「では、いっそ情など捨てなさいませ。その方が双方共に楽でいられましょうから」
「そう言う、ということは本心は違うな?」
なに、言っているんだ、殿下。そんなの。
私、そんな
「いや、ですよ。そんなの……っ」
当たり前じゃないか。せっかく幸せになっていいと言ってもらって、実際も幸せで
ほいほい、と自分の幸せも我が子も放って贄になります? そんなの自分から主張するわけないだろうが。わかり切ったこと言わないでよ、意地悪殿下。嫌いになるから!
到底、なれっこないけど。これまで生きてきた十八年でこんなにも惹かれるひとなどいなかった。あやかし、という
いつも私を思いやってくれる
こんなに想われていいのか、とか。贅沢じゃないか、とか考えることはたくさん。
「その本心を大事にはできないのか、静?」
「だって、そうしたら」
「国や俺たちのことはいい。民のことに心割くのは俺や父上、男の仕事だ。お前が
だから、私の我儘を優先していい? そんなこと許されないとわかっている、私。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます