一九八話 上尊二妃たちのお見舞い
で、ふたりがそわあ、と殿下が使っていたものだが保存状態がよかったので
と、ふたり足音を忍ばせてそっと近づいてそーっと慎重に慎重に寝台を覗き込む。
押し殺した歓声。歓喜の悲鳴が聞こえてきて虎静が首だけ寝返りを打つ。小さな唇がもごもごしているが、なにか食べている夢だろうか。夢の中で腹をすかせている、と?
忙しいやっちゃな。起きている時だって腹が減った時は私の
「さっき泣き声が聞こえていたけど」
「あ。退屈だっただけみたいです」
「そう。ならいいのだけど」
なにがどういいんだ。なんて訊くに訊けずいる私である。
どうかしましたか、あなた。どうしたの、その顔というかそんな表情しちゃって。
あなただって
それとも他人の子は別腹(?)なのですか、ってのも訊けないでいる私である。どうしようか、この状況。てかどういう状況だよ、これ。こんな
こう、皇帝陛下の話ではなにかしでかすかもしれないだーなんだーこうだーとか。
そんなようなことを言っていなかったか。それともこれは私の記憶違いだ、とかそういうオチだったりするのかしら。いかん。困惑のあまり自分が不明になっていますよ。
「ふふ、美人だこと」
「
「え。殿下じゃなく、て?」
「殿下、というよりは静じゃない? ほら、この髪の毛の艶感はどう見たってねえ」
えっと、
うちの
と、まあ。この
はにかみ笑ってなんだか「
よって、普通のあやかしであるみなではそうそう口だしできないのだそうな。
だなんて私などは考えちまうがまあ、うん。私もたいがいに普通じゃないのでな。
人間でありながら身の内に
この前も
冬梅はそりゃ強いかもしれないがすぎれば当然二日酔いの軽いのに悩まされる程度には酒への耐性が月のように
あの時の月ときたら超不服、と言いたげなそういう顔だった。不可解だ。不明すぎるこの狐。当たり前のお叱りになぜ不服不満がでてくるんだ。私は不思議でならないぞ。
「お名前は決まったのかしら」
「はい。「虎静」、と殿下が」
「まあ」
ええ、はい。まあ、ですよね。上尊妃ふたりの声が揃ってしまったのは仕方ない。
だって、ねえ。殿下? 私のこどもだっつったって「静」の字を当てるのはさあ。親バカというよりバカ親だと思われても仕方がない。主張しておく。私の希望ではない。
それほどは主張させてもらいたい。いいけどさあ、名前ひとつでごちゃごちゃ言いたかないし。でも、私発案だと思われるのはなんか不名誉。自意識過剰じゃねえか。な?
「殿下の静好きには困ったものね」
「ええ、まったくだわ」
が、上尊のおふたりは私が訴えるまでもなく殿下の
よかったね、殿下。あなたの
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