一八八話 自分がなったからこそ不明だ
「うー、あーうー……」
「可愛いなあ」
「はい、可愛いです。とっても」
「ああ、俺の、俺と
わお。殿下、早速のろけというか我が子自慢ですか? いや、これはどちらかというと私との間のこどもだからという自慢(?)でしょうか。
と、いう意見は私だけのものだろうか。みんな自分が産んだ赤子が一番だと思っちゃうものなのか、というのも私にはわかりかねる。だって、私は可愛くなかったんだし。
だから、
こんなに可愛い我が子をどうして捨てていいから恵みをくれ、と言えるだろうか。
切迫、
山奥の祠前に捨ててもいいなんて。
だからそのひとが母で、隣で同意し頷いているのが父だと知った。確証はなかったものの野性の勘、というやつか。そのふたりが両親だ、と当たり前に知ってそして……。
そうだな。早々に私はそいつらに見限りをつけた。そういやあ何度か、自分たちは私にとって特別な存在なんだから
その度に私は
そうして繰り返すうちに主張することをしなくなったので私はしてやったり、と思う反面とても淋しかった。言ってくれればよかったのに。見苦しく言い訳を並べてでも、自分たちは
言ってほしかった。嘘でもいいから。けど、それすらやつらは
それはそれで言ってくれればよかった。そうしたら私は今この時も「きょうだい」たちに、あの幸せそうに愛されている者たちに「
そんなこと考えずに済んだんだから。そうなってくれていれば、私は無駄な
つまり、どうでもいい存在だ。でも、今ここにいてくれるふたつの命は違うから。
殿下は抱っこに慣れてきたようでゆらゆらと体を揺らしてあやしてくれているし、赤子は赤子で殿下のゆらゆら、にきゃっきゃ、と言って喜んでいる。微笑ましい
そうしてなにもないようで満たされた有意義な時間がしばらく。不意に階段をのぼってくる足音が聞こえてきた。次いでトントンと扉を叩く音がした。殿下は首を傾げる。
「どうぞ」
「静?」
「殿下、お願いできますか?」
「? なにを」
扉にどうぞ、と言った私は続いて疑問顔の殿下にお願いしたい
「静、大丈夫なのですかっ?」
「な、なは、母上?」
「静、話はおおよそ
「なん――っ、父上までっ!?」
殿下びっくりしているが、そんな
片手で髪を放させて背に払い、ぷにぷにの頬をつついて構ってやる。うにうに、とつっついてやるのを赤子は嬉しげに受け取って、いるだけでなく私の指を捕まえてきた。
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