一五一話 お礼のお土産を持たされて
私が
「必死だねえ、
「貴様には関係ないっ!」
「あは、
殿下、殿下ったら。どうしてあなたはそう正直なんだっつーか
でも、それを指摘する気が薄れるくらい殿下が私を守る腕の熱が心地いい私も相当どうかしているんだろうな。ま、これでこの日やるべきことはすべて済んだし、よしだ。
その後、
これには両皇太子も黙る。なぜかはわからないが、このふたり私の困った顔に弱いとかそういうの、だろうか? なにそれ。そんな共通項があるならもっと仲良くしてよ。
それともなにか。
大人同士、互いに利のある取引しに来ただけだとか飢えを
それ以上の感情はこの場に不必要。あくまでも公平な取引に赴いているんだって忘れないでほしいし、
で、先に折れたのは然樹皇太子の方。彼は私になにか放って寄越して暗がりに消えていった。ん? あとで確認しよ。ということにして私たちも馬車へと戻ったのだった。
再び、来る時より少し濃くなった闇の中を馬車が
……
なので、私は月餅を千切って殿下にも渡した。殿下はすると今度こそ虚を衝かれた顔でおろおろしたが、私が首を傾げる前に受け取ってかぶりついた。……。食べ進める。
どうやら文句のつけようがないくらい美味しいらしい。そうだよね。私も月餅は何度か食べたことがあるけどこんなにこってり甘くてでもすっきり美味しいのはじめてだ。
「
「ああ、なるほど」
蜂蜜ねえ。高級品だ、と聞いていたし、さすがにまだ食べたことなかったのでそれではじめて食べる味わいだったってことか。餡と一緒に
なんてこと考えながら殿下と仲良く月餅わけあって
「おやすみ。
「……、あ、殿下、も」
「……。はは、どんな
「! なに、を言っているんですか」
「ん、だいぶ敬語が板についてきた。では」
では、と片手をあげて殿下は暗がりに停められた馬車に乗って
これしきの、たった少々の別れが惜しいだなんて私だって、私こそ殿下のこと言えないじゃないか。いつから私はこんな淋しがりになって弱くなっていたんだ。アホ臭い。
暗闇になりゆく世界に伸ばしかけた手を引っ込めて
お使いも無事に終わっていたようで、みな寝ないで私の帰りを今か、と待って待って待ち侘びていた。私はお土産の月餅を「
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