一四六話 いつか来る、その日まで……――
それが先々の遠いところか、直近にあるかは不明瞭だが機会はまだあるよ、殿下。
だからそんなにずどーん、とおもっくそ落ち込まなくてもいいじゃない。次回に期待ということで楽しみが先に延びただけ、というのは
だって、殿下ずっと我慢している。私の気持ちの整理を待てと言われて、
私はほぼほぼ
いかに穏便な解決で決着したといっても戦が起こったのはたしかだし、犠牲があったのもたしかで、こちらに犠牲がどのくらいあったか、私は把握していない。私の連れていた分隊は全員無事だと月がちょこっと零していた。が、それだからと仕事なしはない。
一応、一将軍として報告書を作成したりだのがある。……だろうと思っていたが。
「
「え。え、いえ、ですがそれでは」
「なにより、報告できることもそんなにないんじゃないか、と感じるほどだったし」
……ああ。そうか。このひと私に格好つけようと(月
予備の矢や弓に
まあ、結果としては非常に格好悪かった。
バカまっしぐらを披露したも同然だったし。そのせいで月に殴られただの、殴るのは当然の義務でやっただけだからだのとひとりと一体からそれぞれ聞かせられたもんな。
月は「ド
さすが、意地の悪い
まあ、あのアレだ。
ひとは反省できる。殿下が私を一時といえ失ってそうしたように。
殿下がどの程度反省しているか、そんなのあの優しい口づけにすべてこめられていたのくらい気づけた。
「殿下」
「ん? どうかしたか、静」
「ご心配をおかけし、申し訳ありません」
「……いや、俺の
「
「いい。そんなもので俺の
「ですが、殿下は」
「いいんだ、静。もう言うな」
「……。承知いたしました。お見送りだけはさせていただきます。あとは休みます」
なんだかんだ、もなく濃い十数日だった。体は疲労を覚えなくとも心は睡眠を
眠りに落ちる間際まで殿下との口づけた感触が残った唇をいじいじふにふに触っていたが、ふう、とひとつ息ついてふかふかの布団を頭の上までかぶって包まり、眠った。
――私、帰ってきた。
そんな当たり前でごく自然なことを考えてしまう。それもこれも殿下との優しい確認のせいにしてしまおう。そんなちょい理不尽を思って寝息を立てる私は夢を見たんだろうな。見送った筈の殿下がいて、頬に口づけて頭を撫でてくれたような、気がしたから。
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