一四四話 おねがいです。それとこれはおねだり
どうでもよかった。あの時、頭を
殿下が
殿下の
お願い。お願い、です。大切なひとに会えない、会えなくなるのは辛いことだよ。私を助けてくれた
「もう、二度としないでください」
「
「私を、ひとりにしないで」
ひとりでいるのは辛くなかった。かく
ひとりで生きてきた。ひとり理不尽に耐えてきたし、ひとりでいい、と思ってずっとすごしてきた。でも、ひとのぬくもりを知って「いてもいい」と言ってもらって……。
私はその一言で弱くなり、強くなれた。それなのに、そばにいてくれ、いてもいいと言ってくれた
違う、と甘えるな、とおっしゃいますか?
ずっと
それとも、殿下は違う。心変わったと? それは淋しいが受け入れなければならないことだ。
それが他に、
でも、だけど今、ひとつだけ抜け駆けしていいとされるのならばこれを望みたい。
「……すまな、かった」
「ええ。本当に。なので、それ相応に
「ああっ、ああ! なんでも言っ」
「では、口づけを」
「……すまない。どうも聞き間違えたと思」
「私を本当に愛するならその証をください」
口づけ。然樹皇太子にされて、されて、されまくっていたのがいまさらながら殿下に申し訳ないというのと私自身がそうしてほしい、とはじめて願ったこと、ひとつだけ。
あるとするならこれだけ。願っていいなら今、私はこれだけが欲しい。私を本当に想ってくれるのならば、愛してくれるのならば。このくらいは望んでもいいのではない?
そう思って殿下を
「そ、れは俺への褒美、になるのでは?」
「私は欲しいものを望んでいます。殿下にとっても褒美になるなら双方よし、では」
「あ、ああ。うん、そう、だ、な」
「それとも然樹皇太子に先んじられた女に口づけするのは抵抗がおありでしょうか」
「はっ!? ……あ、あの
「すごくべたべたしていそうですね。まあ、実際もしつこいくらいやられましたが」
この時、殿下のした顔を私は当面忘れられそうにないです。これぞ
なにが言いたいのだろう、殿下。私に手をだすなんて悪趣味だとかは言わないとは思うが。だってそれは、それこそ特大「ブーメラン」
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