一三三話 そうだ、どうせ、そうだったんだから
でも実際、私はこんなにも殿下の存在に、与えてくれる優しい気持ちになれる情に
望んだだけ、奪われる。もしくは
学習したのに。それでも、と手を伸ばしたがるのは殿下だから。生まれてはじめて私を愛しいと言ってくれたひと。私の速度でいいから受け入れてほしい、と言ったひと。
すぐそばにいて私を抱きしめる
「んう……っん、ふ、は、ふう」
「こほっ、は、はあ……――っ」
「ねえ、
「ほざけ。私はずっとぶれていない」
「……どうして、僕じゃダメだと言うの?」
どうして? どうしてだ、と? そんなもん決まっている。卑劣なてめえと殿下を同列に扱え、というのか。そんなもん、到底無理に決まっている。むしろなぜわからん?
そして、そもそもがなぜ私なんかの心を
それこそわけがわからない。私じゃなくたっていいだろうに。てめえほどの
あやかしの
その点では
私が、ついていくべきひとは彼だけだ。
「……そう、わかったよ」
しばらく黙った然樹皇太子。が、しばしの沈黙を経て私を放したのでほっ、としかけたのも束の間。視界が
そうこう思い、なにが起こったのか考えている間に私の意識は闇に飲まれていく。
意識の最後でわずかに、
急激に意識が溶けていく。鎖の音。女の子の高い声が抗議? している。殴打の音に続いて軽いなにかが倒れる音。様々な音が連続して鼓膜に飛び込んでくるけど、もう。
ダメだ。気合いで、とも思ったがそんな根性論でどうにかなるなら世話ない、な。
体が抱えられる。揺れている。揺れる。揺れてそして移動している、んだろうか?
どこへ、いくの、私。いやだ、どこにも、いきたくない。唯一、いきたいと望む地は私を拒絶するかもしれない。他国の皇太子にいいように
どうしよう。どうしよう。どうしよう。私に帰る場所なんて他にないというのに。
あの国に、天琳に拒否されて
それとも、なに? もう、新しい場所はあるだろう? とでも? こんな卑劣漢の
私は、恥を知って自害しよう。
そう決めたら、私は笑えた。消えていく意識の片隅で少しだけ微笑んで、実際の私は眠りに
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