一二四話 諦める? そんなことできるものか
父上は
それこそ武力行使しか道が残らなくなる。
それはできるだけ避けたい。東の領土。その広大な地を預かる泉宝とことを構えるのはよほどの、
どれほど腹が立とうと、理不尽を覚えようと広く
この
それはなんという
……俺がこれを言うのも考えるのも
「陛下、使者が急ぎの鳥を寄越しました」
「なんと、言ってきた?」
「は。それが」
室外から声。兵が伝言を携えてきたようだが、陛下は招き入れることなく、その場で読みあげさせる。扉の向こうでほんの少々
「「あのコは帰らない、って言ったよ」と、いう然樹皇太子の伝言と説明の紙を持たされたのだそうです。どうやら、あの、殿下の
「そうか」
「ですが、あの義理堅い
「その方の意見は述べずともよい。
冷たい、物言い。父がこういう言い方をするのは珍しい。が、俺のアホさを思えば当然の凍結だ、とわかるのでなにも言えない。そして、静が俺に腹を立てている。そう。
そうだな、当然だな。わかり切っていた筈なのにいざこうして聞かされると心に深く突き刺さった
足音が完全に遠くなってから父はため息を吐いて俺を見据えてきた。特別、含む意味もないが故により鋭い眼差し。こういう時、偉大さを痛感させられる。同時に、俺の未熟さ加減も実感する、というもの。俺は、もう、静に隣に立ってもらえない、振られた?
「くっ、ふふふ」
不意に、そこでそれまで
「つまらん
「ああ。例の
……。あ。つまり、なんだ。俺だけ真に受けてしまった、のか。俺だけが踊らされたということか、然樹のやつに。ぐう、本当、本当にやつとは相性が悪すぎるな、俺は。
月が言っていたことがいやでも蘇る。
と、いうか俺はここほど素直だったか? それもこれも静が関わっているせいか。彼女の言葉かもしれない、そう思ったら真に受けてしまった。そこに俺が
少なくとも
ふと、そんな「俺って相当バカなのでは?」という思考が
「どうやら、相当気に入られたらしいな」
「そのようですわね。ですが、でしたら急ぎ策を練って講じねばあのコの
「ああ。
「ぶっっ!?」
うっかり想像してしまったではありませんか。静が、そのあの皇太子に微笑みかけて服の帯をほどく様などという、今のこの状況に緊張感のなさすぎる
いや、もはや爆裂したでもいい。とにかくあの、もう俺は二度と命令違反も忠告無視もしませんから虐めないでくださいっ! すでに心身共に極限状態なんですからして!
俺のせいで静がいない。その圧倒的現実で事実が俺をただでさえ削っているのに。
「なぁにを想像しおったんぢゃ? お
「な、な、な……っ」
「よいから、話を先へ進めるぞ。
「! す、まない。ありが、と、う」
俺が泣きそうになって礼を述べると月は鼻で笑って椅子に腰かけ直した。挽回してみせよ、と言ってくれた。そうだ、諦めない。彼女、静を。俺だけは諦めてはならない。
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