一一六話 ささいな抵抗の意への返しは、最悪
小さな呻きがして、皇太子との距離が開く。開いたので私は急いで足枷を
「命令だよ、
がくっ。服の
やはり
私への
「ふう、危ない危ない」
「くっ」
「ダメじゃないか、
「殿下、の悪口を言う、な……っ」
「いいよ。君が嵐燦にとってどういう存在なのか、教えてくれたら考えてあげるよ」
沈黙。痛い静けさが降り積もる。然樹皇太子はなにも言わず、私の告白を待っているようだが私が言うわけない、というのもわかっている筈なのに。どういうつもりだよ?
わけがわからないまま私は身を起こしてというか芽衣に引っ張り起こされて両腕を後ろにまわされて拘束される。まずいな。その気になれば芽衣くらい振り払えるが……。
そうしたら、このクズ皇太子は芽衣を役立たずだ、と、勝手すぎる判断で殺すかもしれない。私の視界にうつる生き
私以上に芽衣にとってはもう、恐怖しかないだろうというのは想像に易い。私の腕を捻りあげる両手は震えている。手のひらに冷や汗を浮かべて私を捕まえている憐れさ。
「言わないのかい? おおよそ予想はついているから別にいい、といえばいいけど」
「なら訊くな。クソがっ」
「ホントに、悪い口。……だけど」
「? あえっ」
なにをするのか、されるのかわからずいると然樹皇太子は私の舌にその針先を
「
「えう、あ、あに、をしへ……いは、い!」
「ああ、
は? な、に。なにを言っているこいつ。
式締め、だと。それは、それを人間にするのは
だって「寡黙・服従・支配」ってそれは。口を利けなくして服従させ、支配するという
身を
「やあ、やえろっ、あっ、あ゛ー!」
「いい声がでるじゃない、水姴将軍。この術ね、
「あぐ、ぅあ、えあっ」
「さて、と。じゃあ、これで仕上げだ」
仕上げ。と言って然樹皇太子は衣の
――ドクン。
急に、心臓が悲鳴をあげた。熱い。舌だけでなく全身熱いし、痛いっ。チクチクだなんて小さな痛みじゃない。痺れるような、焼けた刃を隙間なく当てられているような。
そして、遠いのに近い場所から声が聞こえてきた。甘い甘い、
「これから君は、
「……」
「うん。いいコだね、水花」
甘ったるい声、気持ち悪。と思ったのに気づけば私は頷いていた。いや、違う。「頷かせられて」いた。
目の前にいるクソ皇太子は大満足、といったふう笑顔で私にまたも近寄ってきた。
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