一一五話 顔を見せたらなんだ、これは?
これが精神心理学でいうところの
あの
「なんで、顔なんか」
「ん? ああ。あの
「……醜い、ってので殺すなよ?」
「安心して。僕、女の子には優しいから」
いや、大嘘こけ。
衛仕はほんの少々
衛仕の足音が遠ざかり、遠く向こうで扉が閉まる音がしたので私は枷の
そっと、そろそろりと面を外して
そう言われる前に面を当て直そうとしたが私の腕を掴む大きな手の熱を感じた。嵐燦殿下と全然違う、熱。驚いて自分の腕を見ると青い衣を纏った男の手が捕まえていた。
たどっていくと、見えたのは間近にいる然樹皇太子の
「へえ。はじめてだよ」
「あ?」
「これまで生きてきた中ではじめて見るよ、君みたいなコ。なぜ隠していたのか、醜いなんて冗談にもならないことを思っていたのか不思議なくらい、宝石のよう美しいね」
「あ、そ」
「あれ、薄い反応だね。本気だよ?」
本気、ね。こいつが言うとすべてが嘘臭い謎現象だが実際心に響かない程度でしかないので私の反応など薄くなる以外にどうしろと? 喜べ、とでも言うのか。無理だし。
てめえの
それなのに、どうして手放しで喜べ、のように言われるのか
疑問しかない。そう思っていると然樹皇太子の顔が近づいてきた。ちょっと
くす、と笑う声。私はそっぽ向いて無視、しようとしたが
私が視線を戻すとなぜか、本当になぜなのか然樹皇太子が私の首筋に舌を這わせていた不可解。ぞわっとキた私が皇太子の
「ちょ、なん」
「君、とっても美味しそうだからさ」
いや、それ答になっていない。てかちょっと待ってこいつまさか人間じゃなくてあやかしというオチないよな? マジの意味で喰われるとか、ないよな? いやな死に方。
が、私の疑念が伝わったようで然樹皇太子はさらにくすくす笑った。否定の意を含んだ笑い声は軽やかであるが、それが首筋に吹きかけられている私は
相手の
ひ、ひえ、ひえええっ!? なにしやがんだこの変態野郎! いや、
「ああ、柔らかくて噛み応えもいいね」
「な、な、な、へ、変、態……っ!?」
「失敬だなあ。君のこと、隅々まで味わいたいだけなのに。ま、全然足りないけど」
「それと耳齧るのとなんの関係がっ」
「? あれえ、ひょっとして
意味わからん! てめえがなにを言っていてご馳走だの乙女だの言っているのか私には
それはあれ、ないけど。だって、殿下の
でも、それとこの皇太子の発言の意味が、わからない方がどうかしていた。つ、つまりそういうことかこの野郎。私を抱きたい、と? こんな者を? なにその
……あれ。そうすると嵐燦殿下も悪趣味になっちゃうのかな。いやいや、殿下のはいいんだよ。こいつのこれは愛のない、そういう手の感情がないただの
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