一一二話 取引代わりにひとつ、要求
女の子の視線がかすかに動く。牢内の私に向けられた目。恐怖し、亡き父に代わって助けてくれないだろうか、という願いをこめた瞳の色。猫そっくりの
「ひとりぼっちは淋しいだろ? 愚かで
「おい、クソ
見ていられなくて、悲しくて。守ってくれる存在を亡くしただけでも辛いだろうにこの上、私が口を利かないと言うからなんて理由にもならない理由で殺されるなど……。
これを見過ごしては私もクズの仲間入り。そんなの許せない。
だけど、いつだったか
そんな面倒臭い心の持ち主。だから放っておけない。少なくとも、私は。絶対に。
「君は本当に口が悪いなあ」
「はっ、そうかよ。
ひく。皇太子の手、少女を切り捨てようと刀を握っていた手がひきつるような動きを見せた。私の片足首にも枷が嵌めてあったのであちらに近づきようないが、声は届く。
「そのコを、私に寄越せ」
「? どういうことだい」
「こうして牢に
「そんなもの、僕のところの
「てめえの息がかかった者など信用できん」
すぐ殺されないなら、生きて
そうなった時、この身に
信用できない。
これはこれで
なにを仕掛けられたってそれはあのコを選んだ私の責任になってくる。あとは皇太子がどうでるか。だったが、思わず
意外。もっと
あの野郎がしていたことは低俗至極だ。惨すぎる。ひどすぎる。残酷すぎるだろ。
少女の向こうであのいけ
どうでもいい。重い手をあげてまだ幼い、あやかしにしても幼いそのコの頭を撫でると少女の瞳から涙がボロボロ流れはじめた。ひっく、ぐす。漏れでる
おそらく人間の歳に無理矢理はめて十代に入ったばかりであろうそのコは泣きじゃくって両手で顔を覆う。零れでていく声。「
もう、この世のどこにもいない父親を求める声はきっと悲しい響きなのだろうな。
生憎もなく私には親などいたことがないので共感できかねるが。それでも大切なひとを永遠に
そうでしょ? そういうものじゃあない? 違うなら違うで、もういい。私はもうこのコの命を預かった。すくいあげてしまったのだから、ならば最後まで面倒を見るさ。
「泣きやめ。
「ごめ、なさ」
「怒っているわけじゃねえよ。ただ、てめえの親父はてめえを解放する為に命を懸けて散ったのがわかるのならそれ以上泣いて心配を増やしてやるな。いつまでも休めねえ」
「……! はい」
ひとつ、強く
お世話になります、だろうか。それともお世話します、の意だろうか。わからないが私もひとつ頷いておく。ついでに少女の頭をふかふかぽんぽん撫でておく。柔らかい。
私の髪とは違う。
で、このコのこれはいわゆる猫っ毛というやつか。顔立ちも猫のそれによく似ているのは思い込みによる
とりあえず、こうして世話係をつけたということはまだ当分解放する気がないということだ。少なくとも天琳に返す気がない。いや、まあ、うん。こんなのに
ありえない。いかに殿下の
そんな私なのだから。それを解放してくれ、と言って金をだしていたら
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