八八話 まさかのびっくり槍の逸話
それはともかくとしてやることがある。
「なあ、
「
「……ちっ、そう言うと思ったよ」
だよなー。てめえはそうだろうよ。怪我人の手当てなんてするわけがない。そんなことを自主的に、もしくは頼まれてしはじめたら
そいつらは警戒、というよりは「ひっ」とか言って怯えていたが私は痛みで動けずいるのをいいことにさっさと水で火傷を覆って癒やしてやる。妖気を孕んだ属性攻撃は妖気で以て癒やす。あやかしたちの中では鉄則の常識。
あの性悪クソ
それに火傷を火で
「……。……はっ、あ、ありが」
「別に。こっちがやったことだ」
いつも通り素っ気なく返す。
陛下がすぐ「こちらへ」と合図してきたので私は帰りに地面に突き刺しておいた槍を引っこ抜いて陛下たちの下へ参じ、槍を背に負うと
なに、なんだ。今度はなんだ? と思っていると厽岩将軍は私が背に負う槍のとある一点を指差してわなわなと震えた。私が振り向いて見てみるとそこには
いや、動物の
たしか太陽の中にいる三本足の赤い烏。
? それがどうしたんだ。瑞兆を願って、戦の武具にそうした図柄を取り入れるのはおかしなことなのだろうか。それともこのひと、ひょっとして
厽岩将軍の方がいくらも若い。さすがに
皇后陛下、梓萌様は三六歳だ、と伺っていたし、自身は
と、なればどれくらいだ? 仮に四〇すぎてからの子だったら七〇代? それって厽岩将軍くらいの年代からしたら枯れ木じ、いえ、結構
それとも世代を超えて語り継がれるほどのひとだったのだろうか。だったらすげ。
「その、槍……っは、
「厽岩?」
「へ、陛下は存じないでしょうな。私も私の父に聞かされて知っているようなもの」
そりゃあ、そりゃあ。厽岩将軍の父の時代に活躍したような御方ならそうなんでしょうね。知っているのはあと超古参の
その、「ミヨウ」将軍というひとはそんな、言葉に詰まるくらい有名だったのか。それこそ皇后陛下じゃないが
「壬葉将軍。戦場の鬼と
そういう系統の話か、と思っていたら話は思わぬ方向へと飛躍していって驚いた。
鬼妖が授けた槍? その鬼は、いやあ、それはさすがにないだろうそんな偶然は。
とか思って油断、油断だろうな。気を抜いていたら新しい爆弾が
「水を
「げぶほっ!」
おい、それもう確定じゃん。
つか、火性を持つ者が近づくだけで寿命縮むて。それで月がいやがったのか、な?
それってつまり、
月は強い火性を持つ分、強すぎる
そういやあ、旅の道中で「
つまり、浩との間に私というひとの肉体が挟まっているから、いたからまだ一緒にいられた。一緒にいてちゃっかり妖気を着服していた
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