六八話 忙しい、と言われれば。まあ
「ぬしも忙しいやつぢゃのう」
「仕方ないって。身分相、応?」
「なぜ、疑問形になるんぢゃ」
朝陽がのぼったので私は
尚食、とは食事に携わる職のことで厨房を切り盛りする者たちはこれにあたると教えてもらった。
ので、無理言って食材だけわけてもらっているというわけだ。尚食の勤務者たちは毎日食材をもらいに来る月に何度も言い募っているそうだ。調理しますから、とかって。
わかる。気持ちはわからんでもない。そりゃあ殿下の
殿下が心配するように毒味がいないのに食事を他人に任せておく、というのはな。
まあ、そんなこと言わなくても
それでも忠告というか心配を聞き入れて自炊するのは初対面時、印象最悪だったのを早く帳消しにできるよう努めたい、と思っているが為だ。いやな私を、消したいのだ。
ずっとまっすぐ
昔だったら自分から食事をしよう、と思うこと自体ありえなかったが、いつか
なので、慣れる為の訓練だった。月は毎度美味しそうに食べてくれるし、一度だけ殿下が昼前に来た時に軽食をつくってだした時は喜んでもらえた。美味しい、と言って。
私ははっきり言って料理が上手いか下手かわからないので他人批評での判断だが、普通にどこぞの殿方の嫁になるには充分。ばかりか貴族の家の厨房に
そして、朝餉を終えた今、着替えて装飾品選びを手伝ってくれる月が忙しいな、と零したので仕方ない、と言っておいた。そう、仕方ない。后の身分相応なのだからして。
多忙さは権力を持つ者の義務、だと少なくとも私は思っている。
仕えられる側であり、権力を与えられたならそれに見あう仕事をこなすのは后としての義務だ。そう思っている。だから、面倒臭い行事もこなさねばならないわけである。
「でえ? 皇太子が唾吐く勢いでおった
「いや、会ってないのに決めておくのは」
「そうかえ? あの男があそこほど毛嫌いするのぢゃぞ? いざ会って反吐戻されても困るのは
「そ、そう……」
私の
う、うぅーん。いや、もうしょうがないからってのもあるし、誰も知りあいがいない場ではないので。今日の茶会には皇后陛下、
陛下がまずは上尊四夫人と顔をあわせておいてほしいと言ったのでなにか意味があるんだろう。それに新しい四夫人たちは決まったばかりなのもあり、
忙しいのにこの上、
ので、先んじて後宮に慣れている、かは微妙だがでも慣れがあり、上尊四夫人中ふたりには面識があり、ずっと授業してもらっているので陛下に「大丈夫ね?」とトドメ。
トドメを刺されてしまった。から、もう腹くくっている。楽しめる、かは謎しかないけど殿下の目が節穴だのと言われないように今日までに習ったことを総動員してやる!
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