六四話 ここからはじめる私の新生活
それがなぜ
そんなようなことを言っていたような気がするんだが、そこんところどうなんだ。
私がぽかん、としている間に殿下は
なにが狡いって言うんだ。あなた、至上の
「大事な
「や、殿下。それは陛下が正しいです」
「とてつもない
いつになく真剣な声色ではっきりぶった切った
いかに臭いっつったって一応当人たちは一生懸命着飾っているんだからそんな心労だなんて大袈裟に言わないであげてもいいのに。その中にもしかしたらましなひともいるかもしれないのに、もったいない。……ちょっと待って。と、いうことは抜けだし――?
面談を放っぽって来たってことだよね。あの、それってあとで
私まで巻き込まないでくれ。殿下、あなたも身を
「へええぇ?」
いつもだったら
「
「は、母上……っ、な、なぜここが?」
「はあ? このわたくしがいったい何年あなたを見てきた、と? いきそうな場所など限られていてよ。よってわたくしも馬にこれでもかと
「あ、あえ、えっと……」
「でえ? 弁明は、先ので、よろしくて?」
うわあ、陛下、意地悪ですよ。なにもそんな一語、一語強めに区切って言わなくてもいいのに。殿下の健康的な肌から血の気が全部落ちていっているような気がするです。
ただ、まあ、私にできることは一切ない。
なんて、
とばっちりが当たったりしたら可哀想ならぬカワイソウな事態になりかねないし。
そして、それは宦官たちも鋭敏に察したようで風が通って適度に涼しい筈が流れ落ちる滝の汗を補うように茶を一気飲みしてさささっと頭をさげて
と、したのも束の間。殿下が
お陰で私は胃が痛くなる心地だ。これがただの親子喧嘩ならまだまあ、いいけど。皇后陛下対皇太子殿下、という
私、宿題が残っているし、荷物の整理もしたいしでもこれ放置するのはなんだし。
どうしよう。とは思ったが、結局、嵐燦殿下が
いいのかなあ。これ、私が見ていても。というところで殿下と目があう。殿下が蒼白顔から
「さあ、帰りますよ!」
「は、い……っ」
「あ、あの、おもてなしもできず」
「まあ、
「はい?」
「宮のお名前は決めていて? 門に掲げる看板職人に依頼するので教えてくれる?」
「あ、はいっ! これ、です」
宮の名前。当然だが古い宮を改修したといえほぼ新築した宮で名無しだったそうなので両陛下のご指示で宮の名前を引っ越しの当日中には決めておくようお達しがあった。
私は悩んで考えた宮の名を記した木簡を月に渡して皇后陛下に持っていってもらったわけだが内心ドキドキだ。却下されないだろうか、と。でも、一応これもアレ、だし。
「……。そう、いいお名前だわ。わかりました。こちらで注文をかけさせますわね」
「あの、変じゃ、ないですか?」
「あら。あなたにとって月はそうだ、と思えたのでしょう? なら、よいのですよ」
月。そう、私が考えた宮の名前は「
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