当初予定より長々かかっただけは
六三話 大きく工期が伸びたが完成したようで
「……」
「こりゃまた
そしてまた、十数日がすぎ、
と、いうわけで長らくお邪魔していた基本男性と世話に必要な
豪華、というが過剰な飾りが施してあるわけではなく、
門ひとつとってしてもかなりの力作。宮の柱には細かい
まさしく
「それにしても、宮の豪華さに
「私が騒がしいのを嫌うと思ってじゃね?」
「……ま、一理あるか。他の
「まあ、中に入って、さほどというかほとんどない荷の整理でもしていようぜ、月」
「ふむ。変わったのう、
私が一月の間、着ていた先送りされてきた服を詰めた衣装箱を運び込んでくれる
なにが変わった、と。それによってなにか不都合でも起きているのだろうか? と思えども月は明確な音にはせず、肩を
こいつの鉄、どころか鋼の
仮にどころか正真正銘
ありえない。でも、それも月にかかればちゃんと許可をもらって
で、中に入ってみてきょとん、とした。
……。少しだけ考える間をもらったが、たどり着いた結論は私への気遣い。殿下なりの心配り。私が自分で揃えられるようにしてくれた。押しつけでない程度の飾りもの。
これは殿下がなにか
一階の奥は軽く調理もできる厨の間になっていてそのほとんどが月がちょろまかしてきた酒の瓶で埋まっていた。……幻覚、ということにしておこうと念じて私は二階へ。
二階は二室だけ。日中すごすであろう
見渡せどそれしかない。綺麗な蒼の花瓶と水差しも空っぽで置かれているだけだ。
調度品が私の瞳の色で揃えてあるのはいち早く察したが、気恥ずかしく訊くこともできないままお引っ越し手伝いに来てくれた宦官たちが私の荷物――服と装飾品とあの時選んだ鎧、そして
「暑い中での作業、ありがとうございます」
「い、いえっとんでもございません!」
「月、持ってきて」
「はい」
引っ越しに際してつけてもらった宦官たちに
それを月に配ってもらい、私は事前に寝室からおろしていた予備の椅子に腰かけ、
な、なに。なんかまずかったか? と思ったら宦官の中でも
「殿下のお后で、らっしゃいますよね?」
「? 一応、予定では。それが」
「こんな、宦官を手ずからもてなしてくださった
え? そうなの? てっきり桜綾様辺りは普通にもてなしていると思ったんだが。そりゃ気まずくて飲めない、かな。まあ、無理強いしようとは思わないし、どちらでも。
私は円扇の陰で
飲め、とも飲まなくていいとも言わないことで彼らにも選択肢がある、と示した。
「飲まないなら俺がもらおう」
しばらく、沈黙が玄関の間にただよったが、突然
見ると殿下がなぜか、本当になぜかいて固まっていたおじさん宦官の手から
ちょ、殿下!? あなたが飲むならもっと上等な茶葉使ったのにーっ! なにやっているんですか、いったい。だいたいあなた今日は一日忙しいって言っていなかったか。
妃選びがぎゅうぎゅうに詰まっている、これまでいやがった罰よろしくとかって。
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