六一話 恥ずかしいこと言われたから、だから
「
「では、
「
「……。そう、か。
「褒めすぎでは、ないか?」
「俺が、愛する
げふっ!? ちょ、不意打ちやめて! 恥ずかしいだろうっ。くう、どいつもこいつも私で遊びやがって。……ただ、意外だ。殿下がこんな不機嫌そうに
それがなんだか、どういうわけか、胸の奥を叩いてならないのはどうしてだろう。
これを、どういうふう表現したらいいのか、私にはわからないことだけはたしか。こうしたこと、その、アレ、れ、恋愛というものに詳しくないし、私。あ、いやでもこれは
よくわからない。知りたいとは思えども理解の
努力が足りないのはわかる。わかりつつも目の前の課題をこなすのが忙しくて頭の容量が足りない。だから、目に見えない恋だの、愛だのに構うことができないで、いる。
ダメだってわかっているのに。構いたいけどどう構っていいかがわからなくって。
「あの、殿下。そろそろ……」
「ああ、すまない。せっかくの時間をふいにしてはもったいない。お茶にしようか」
「はい」
「……静、正直に言ってほしいのだが」
「はい?」
「俺と一緒にいるのは、その、いやか?」
は? なんでそんなことを訊くんだ? いやだったら
なぜか、今の殿下はこの間と違う。なんだ、もしかして他の女と会っていたから?
他に
それはそれで言わない方がいいことだと思うが、こう「あなたがどこで誰と
なにが殿下をここまで悩ませているのか不明だ。不明ではある、けれど私は……。
「殿下」
私はもう偽りを告げることも思ってもないことを意地張って言うつもりだって一切ないように決意した。
「殿下は、温かい」
「?」
「私のまわりにいた人間共はみなずっと、じっとり冷たかった。だから私は私の方からやつらに見限りをつけた。どうせ、利用されるだけならと心を頑固に頑強に閉ざした」
「……静」
「殿下は私によくも悪くもまっすぐぶつかってきてくれた。熱く
それ、そんな
「憎み、嫌う。嫌悪し、憎悪し、ひとを同じ生き物と思えなかった私など
「……」
「どうして私が、こんなにも恵まれておきながら、幸せに浸りながらあなたを嫌っているとかいやだ、と思うのか逆に訊きたいくらい、この先を知りたい。そう、思うのに」
言っていてだんだん恥ずかしくなってきた。でも、殿下の手をいまさら振り払って
そこのところを、殿下が疑わないでほしい。たしかに一度目、二度目と無礼で失礼な口を叩いて、二度目にいたっては相手をそう、と認識して敵意を向けたから無理ない。
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