五二話 緊張過多で胃が痛い、です……っ
そうして
……。自虐
軽やかで気さくで優しい声の主が自ら扉を開けたのに私は驚いたが、突如抱きつかれて
やめろ。私だって自分の口からこんなのがでるなんて予想外どころか予想にすら入っていなかったわ! だからその
「聞いたわ、
「え、ええ?」
「んもう、静ったら。ふふ、お顔見られちゃったのが殿下に、だったなんて運命?」
「いや、そういうの信じていない」
「そう? 素敵だと思うけど。あら?」
そこで声の主、抱きついてきたひと、桜綾様が不思議そうに首を傾げたので私は気まずくて
証拠に桜綾様は頬に手を当てて首を傾げた。が、
皇后陛下の背には女性にしては長身な――私もひとのことは言えんが――それでも
これはアレだ。油断したら頭蓋噛み砕かれるであろう
あとおそらくもなく
「
「
「おやめなさい。なんと恥ずかしいこと」
桜綾様の発言から、あのひと、
慣れない。顔、この顔をさらしていいものかどうかっていうのは、悩ましいのだ。
殿下や月は「美しい」と言ってくれるし、鏡にうつった顔は鏡のうつし損ないでなければ綺麗だったが、私はなんというか、嫌われるのは全然いい。慣れている。だけど。
でも、私の顔で気を悪くさせたり、吐き気をもよおさせたり、嫌悪を抱かせるのは本意じゃない。ああ、私は自己否定ばっかりなんだ。肯定できることなんて水の力だけ。
で、美朱様に睨まれるままこんな無礼で非礼な娘に授業なんてしない、と言われるかと思ったら他の誰でもない皇后陛下が
「そのコは長い間、虐げられ、利用されてきて
「そ、れは……」
「だいたい、
「なっ、そういうわけでは!」
「では、なんなのです?」
「……っ」
「異論がなければ、本日は触りだけ。静」
「は、はいっ」
「もしも、心が許すならお顔を、見せていただけないかしら? わたくしもまあ、
うふふ、と微笑む皇后陛下はなにかを思いだしてくすくす笑っている。私はひたすら疑問符にまみれた頭だったが桜綾様に一旦離れてもらって、室の中に入って少し
は、恥ずかしい。ダメ、
で、私がなにを考えているか察してか、月が円扇を返してきたので私は
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