四七話 まだ、午前なんだなあ。はあ……
私がむす、としていると
昼だから、習慣で腹が鳴るのか。それとも食欲がいつにも増して
夏の
扉を開けた月は
ふたりはそれぞれに足のついた小さい台? のようなものを持っていて上には見るからに美味しそうな食事の皿が乗せられている。彼女たちはそれらを
「
「や、あんだけ食って食えるてめえが怖い」
「あんな軽食なんぞ食うたうちに入るか」
そう言っていそいそ食事に手をつけていく月が私は心から怖い。まあ、でも私も食べられないわけじゃない。飢えを、渇きを覚えないってだけで満腹も、覚えないからだ。
空っぽな感じも満たされた感覚もない。なんと淋しいことか。でも、それでいい。
満たされたら飢えてしまいそうだもの。満たされたいという気持ちが優位に立ってしまって私はなにをするだろうか。殿下はああ言ってくれた。今すぐでなくていい、と。
――私、どうしたいんだろ?
食事を
あの優しさに満たされたい、と思ってしまった浅ましい私が憎たらしいのはそう。
だって本来なら
そんな都合のよい、
なんて、この
きっと
すごい、尊敬する。でも、そうした女らしさに憧れを寄せる真似はしない。殿下のまっすぐな瞳に見つめられるだけで私、満足できる。だから、もっと相応しい女性――。
「静、疑っておるのか、あのわっぱを」
「! ち、違」
「では、そのよう、悲しげにするでない。……だいたいなにを考えおるかは察する。どぉうせあの美貌の
うぐ。さすがに鋭い。私が言葉に詰まっていると月は私の食事もちょこちょこちょろまかしていき、あむあむ噛んで飲みくだしたと思ったらすぐ真剣な声で言葉を放った。
先ほど
「あのわっぱはなかなか見どころがある。静を
「でも、私には女らしさなんて」
「ほう、あのわっぱがぬしにしおらしさや
「でも、ここは後宮で、殿下は……」
「そう。至上の御身、皇太子よ。そう生まれたからには必ず
なぜ、そんなことを知って、というか断言できるんだろう、こいつ。そう思ったのが口元にでもでたのか、月はふふ、と微笑んでなんでもないことのように言ってのけた。
それこそ軽く、とんでもないことを。
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