四六話 茶と茶請けと肴に小話も
「
「……」
「静? ……なあ、俺の気持ちを今すぐに受け止めろとは言わない。ただ、俺の気持ちに嘘偽りはないのは覚えておいてくれ。お前でなければできないことはたくさんある」
「代われるひとが見つかるさ」
「見つかるか。絶対だ、静。あの夜、俺はたしかに永き渇きを満たされたのだから」
なんて、あったかい言葉。あの
ずっと、渇いていた。でも、
幼いまま、愛知らずとも愛されたくて
優しい、ひと。なのに、私は乱暴にこのひとを言葉で傷つけて……。嫌われて当然なのに、どうしてそれでも、私のある意味気持ちを受け止めてくれるの? 意味不明だ。
「ふえ?」
「ふふふ、これもまた世の
「?」
「なに、ぬしは黙って愛されておればよい」
それはどういう助言だ、月。それに世の混沌の予兆って殿下が私に、その、愛を傾けることがか? どうしてそうなる。てめえの頭の中はどうなっていやがるんだか疑問。
不可解すぎる天狐に頬を
それからは殿下が淹れた茶を飲み、茶
それは、私も思ったけど言わない。そこまで私は底意地悪くはなれない。口は悪いし汚いと思うが。であっても、私は月のようにはなれない。なりたい、とも思わないが。
で、しばらく話を聞いていた殿下だが。
「ひょっとして、静が生まれたのは
「多分、私が特別調合した
「妖、力水……?」
ぶつぶつ言っているのを聞くに「
私はある意味助かっていたんだが、痛恨のアレというやつだったらしい。殿下にとってしてみれば。別に悔やむことでもないと思うんだが。こうして今日会っているんだ。
ま、まあアレだ。私は別に嬉しいとは思わないっ。と、いまだに素直になれない私に内心ため息がでていきそうになる。こんなこと考えるなんて
殿下は正直に気持ちを示してくれたのに。長年、十八年の積み重ねが私を
月は「恥ずかしがりめ」と
私が面をつけると殿下が
いや、私が詮索することでない。だから黙って案内についていく。
木を削って彫りあげた壁が並ぶ奥にある室の鍵が開けられて扉が開かれたので月が先行していき、私は鍵を案内の宦官から預かってから室に入って月が
「緊張したかえ?」
「しない方がおかしいだろ」
「ふふ、顔も見られたしのう?」
月、てめえ。そういう余計なこと思いださせるんじゃねえよ。ああ、恥ずかしいっただの穴だなんて贅沢言わない、
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