四五話 狐のからかい。殿下はのろけ(?)続行
なにも飲んでいないのに
およそなにを言うかなんて想像つく。「
「もったいつける筈よなあ」
噎せる私の背を軽く叩いてくる月はなんか、予想と違ってよくわからない言葉を紡ぎはじめた。もったいつける、もったいぶる筈だ、とな? なにのこと、なにの話それ?
私が月の言葉の意図をはかりかねていると月は自らの
「こーんな美貌を見せつけられては妾の自信が木っ端微塵に砕け散るというものよ」
「月もたしかに美しくはあるが」
「
「ある意味、な。どうだ、
「ずいぶんとおおいにのろけおるのう? そこまでされては他人ならぬ
ごふっ!? 噎せた。追加で、さっき以上に大きく噎せた私の前に茶が給仕されるがいいのか、皇太子殿下が手ずからもてなすなんて。……じゃなくて! なぜだなぜに?
どうして人間もあやかしも揃い揃って私を
うつった者を二割だの五割だのと
ぜってーそうだ。じゃなきゃ、私が綺麗に見えるなんてありえないんだから。でもそれを証明する為には術を解除しなくちゃいけない。さあて、どこに術が仕込んである?
「見よ、今度は鏡の不具合を疑いだしておる。ここまでくると
「静、鏡に仕掛けなんてないぞ。それより茶が冷めてしまう。好きなだけ疑っても、見つめてもいいが、先に茶を飲もう。それに、先ほどの
「! アレは、なんだったんだ」
「暗殺用、にしては異質だったな。
そう言って殿下は
敵いっこない。幼い頃から優雅のなんたるかを叩き込まれてきたであろう皇太子殿下に挙措で、仕草で勝とうなんて土台無理な話。それくらい端正すぎて眩しい振る舞い。
なのに、この男は私を
本気、なんだ。そう思うと私は嬉しい、よりは恐ろしいと思ってしまう。だってこいつは皇太子。当然
うぐぐ。胃が痛い。どうして胃痛なんて覚えなくちゃいけないんだろうか。こんなふうに振りまわされるなんてらしくない以前になかった。あの
それを言ってしまえば私に言い寄る男なんてはじめてであり、恋も、愛も知らない私に后だなんて
「あ、のさ……」
「うん?」
「私、
「……。大丈夫だ。母上に頼んでおこう」
「いや、
「辞退、などさせぬ。お前は必要以上に構えぬようあってくれたらいい。そして、俺を支えてくれれば充分なのだ。それで足りない、と思うなら仕事の前に聞いたのだが父上がお前を将軍に、と
「……ん?」
「
なんじゃそら。ちょ、それはさすがに
なにいいこと思いついた、みたいな顔してアホなこと言いだしていやがるんだろ。
普通に考えてありえねえ。……から、いいのか。たしかに
たしかに隠れ蓑として将軍となるのはいいかもしれないし、そちらの方が力を発揮できそうで后として寵を競うよりも万倍役に立てると自負できる。というか、それくらいしか取り柄もない。私は殿下がどれほど言葉を尽くしてくれても変われないかもしれん。
それくらい歪んだ
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