四二話 恨み言吐き切ったら、そしたら……
困惑する相手を見かねたのか、はじめからそのつもりだったのか、
これは、私への
てめえが胸を痛めることなんてなにひとつとしてねえだろうが。てめえは次期
「
「うるせえよ」
「……っ」
「私はてめえと利く口なんぞ持たねえんだ。なにしろ汚らわしすぎて
確信を衝かれてか、皇太子は再びしおしおと
お似合いだ。私に鬼面が似合うのと同じだけこの男には無様さが似合いだ。そう、思おうと考える時点で、私の胸には罪悪感が
ありえない。あってはならない。こんなふう弱った姿をさらしただけなことで詫びだの謝罪だのに代わるなんて、そんなのは甘えだ。所詮、甘やかされて育った生き物だ。
……もしも、私が私のように生きてさえいなければこんな綺麗な男の
そうじゃない。私には偉大な浩が入っていて人間じゃない私が息をしている。邑に報せてやる義理もない。あの親共は私など最初から生まれていなかったかのよう振る舞っていた。
「どう、すればいい?」
「はあ?」
「どうすれば、お前は俺を想ってくれる」
「ありえねえ妄想すんな。気持ち悪ぃ」
「……そう、切り捨ててくれるな。静。胸が潰れてしまいそうだ。俺はただひとり、お前からの愛がほしいのだ。お前はなにが欲しい? お前ならどうやって手に入れる?」
こいつは本格的
どう、しよう。引っ込んだ筈の悲しみが溢れてきそうだ。なんでも、望めば手に入る皇太子という立場に
私が、欲しかったのは……いていい、場所といてもいい、と言ってくれるひとだ。
目の前の男は両方一緒に私に差しだそうと示してくれているのに、私はまた、月
いいのか、いても。いいのか、私なんか。私なんてなんの役にも立たない。私が役立てることなんて水の恵みをわけてやるくらいなもので他になくて、役立たず、だって。
私がいまさらすぎることで困って月を見る。相手は「しょうがないやつぢゃのう」とでも言いたげなやれやれ、という
「おい、皇太子」
「お前は静の
「うむ。月ぢゃ」
「では、静は
「? なぜぢゃ。まあ、凪いでおると思ったら突然荒ぶるところはさすがぢゃがの」
うるせえ、月。こんにゃろうが。私が珍しく大反省しているのを知っている上でこうした話題を引っ張ってくるから
しかし、まあ。こうして冷静に見るとこの皇太子は本当に整った顔をしている。まさに一国を
なのに、私が、私の気持ちが欲しい。そう望むのはなぜなのだろう? これまでにだっていろんな美女を見てきただろうにそこでなぜ私に飛びつくのだ? 好みが厳しい?
「あの夜見た静の美しさが忘れられない」
「おおっ、そういえば忘れない、と言うておったのう。で、静のどーこに
おい、クソ
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