四〇話 私史上最も不機嫌になった瞬間だ
「
「
「遠慮はしないでいいのだが」
「違えし。つか、寄るな」
「その、
「いやだ」
室内に突撃してきた時の剣幕はいずこ? といったふうすこぶるご機嫌そうなクソ
こ、この役立たずっ! やっぱり私に仕えたいなんだかんだは口デマか、クソ
そう、私が心中で悪態という悪態をつきまくっていたらなにやら物々しい、服装を見る限りは
急ぎの仕事を片したらゆくからそれまでに私をどこだかの間に通しておけ、とか。
……。思考がもう、混線を極めすぎていて頭から煙がでそうだ。知恵熱とかない?
具合が悪い、急な重病かもとかってので後宮の
「
その先を彼は言わなかった。言わなくてもわかった私もたいがいにアレだが「無駄な算段を企てる真似もなさいませんよう」と言いたいんだろ? くっ、なんてことだ!?
「月」
「言うたぢゃろ、腹をくくれ。女は度胸ぞ、静。どーんと構えておけば不自由など」
「今もうすでに不自由極まりない」
と、言いはしたがここで
不愉快で不快で不機嫌の底もぶち抜く勢いではあったが、仕方がないので宦官の手に手を乗せて案内を頼んでおく。ほお。安堵の吐息が聞こえてきたんだが、気のせいか?
だいたい、なにに対して安堵する、と? そう思って先を見ると皇太子が不満そうに唇を尖らせていたが、こちらが余計不機嫌でいるのを見て取りふと微笑み去っていく。
私は月と共にその背中を片や睨みつけ、片やおかしげにくっく、と笑って見送る。
私は口を、自分でもわかるくらい尖らせて不服不満を表明したが、手を引かれるに任せて案内に従って執務の
「こちらでお待ちください。窓はいかがい」
「必要ない」
「……。わかりました」
窓は、と言って窓の
あのクソ皇太子がどう私を言ったのか知らないがどうでもいいったらいい。構わないでほしい。ここ一年で起こさなかった
癇癪玉? いや、正当に持っていい怒りだよな、これ? だって、私の気持ちなんて徹底無視じゃねえか。どうして私があのアホの
なのに、なぜ大嫌いなあんな男にほぼ強制的に
おかしい。変だ。この世はどこまで残酷を極めて私にぶつけ続ければ気が済むの?
悔しい。自分の身ひとつ好きに振れないこの理不尽が悔しい。……狡い。てめえらだけ狡いんだよ。私はこんなに耐えて耐えて、
なのに、てめえらは声ひとつでなんでも好き勝手出来るなんて。そんなの変だろ。
もう、いっそ、私なんて……――。
「静、それはならぬ」
「月、てめえになにが」
「ぶつけどころのない苦しみをだからと己への殺意に変えてはならぬぞ、静。広く大きな視野を持つがよい。望もうとて
「知るかっつーの! 私は、だってやっと」
「わかっておる。あの
わかっている。わかっているさ、そんなこと。
そう思ってくれたんだってのは。でも、だったら私はこの女の
なのに、どうやって幸せになれと? あのクソ皇太子の
それすらも贅沢だ、ということか。私は言ってはいけない
……。もう、ヤダ。なにもしたくない。息するのも
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