三三話 予想を超過しすぎな事態、連続
男は国守り、女は家守る。それが鉄則としてある筈だ。それを
「なに? 大事な客人の相手中だと」
「しかし、お苛立ちのあまりお
「まあ、困ったこと。陛下、話だけでも。きっと
「あの、お気遣い、なく?」
「むう。……すまぬ。息子がなぜかな」
息子。また
私が決意新たにぬるくなってなお香り高い茶を一口含んで
この応接間の外、陛下たちの背中側にある扉の向こうから荒々しい足音が聞こえてきて扉が叩かれた。……あの、ひょんなことで壊す気でいるんだろうか、向こうのやつ。
陛下が扉の側に控える
「なぜ見つからないのです、陛下!?」
「そうは言うが、お前……」
「あのよう美しい者が目撃もされないなど」
「落ち着きなさい、
「しかし、しかしっ」
もっとこう、ひとを
なんだ、どうした? そう、思ったのも一瞬だった。風が吹いた。室の熱気を逃がす為に開けられていた窓からの涼しい風が皇太子の御簾を舞いあげさせてその顔を見た私は、血の気がザザァ、と引いていくのを感じた。気づくな。気づくな。こちらを見るな。
だが、現実とは無情の極み。風に目を乾かされたのか皇太子が目をまたたかせてこちらに視線を寄越してきた。そして、固まる。舞いあがったままの御簾の向こうの漆黒。
月のとは違う、黒い
「お前、な、ぜここにい」
「
「……お前が、湖の
なにか、なにかしらが怪しい、という感じでもない。信じがたいことを聞いたような声色だったが私はそれどころではなかった。まさか、そんな。月が
恥ずかしい。身の置き場がない。どうしたらいい。いや、それ以前に見ないで、私を見ないでくれ! こんな醜い鬼の娘を、私なんかをその
私が気まずくておろおろと無意識だったが顔を隠すと隣の月も私を庇うようにして腕を伸ばして私を
「
「お前、あの時のあやかしっ」
「だったらなんぢゃ。ぬしが発令させた
「俺、の? だが、その娘は水を」
「ふん。ぬしに話してやる義理はない。それより両陛下になにか訴えがあって来たのであろうに余所事へ気を取られてどうする。どぉうやら次代の
ざわり。周囲がざわめく。月の発言で。でも、そうだ。両陛下になにかしら訴えがあって接客の場にまでずかずかやってきたんだろうに。私をじろじろ見てこないでくれ!
両陛下も
月の無礼な発言のせいで室で控えていた
「嵐燦、何事なのだ?」
「父上、この娘ですっ」
「? 待て、話が見えぬ」
「俺が探していたのはこの娘です!」
なに、を言っているんだろうこの皇太子という生き物は。探していた。私を……?
どうして、だ。あの晩、月に燃やされかけた
そんなことの為に
でも、その四夫人の
完全にしくじったとしか思えん。そう思ったのに続けられた皇太子の言葉は――。
「父上、母上、俺はこの娘を
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