三二話 お礼のおもてなしは渡来の紅き茶
遅れてきた
む。なんだよ。はじめてのもんを見たら興味を示すのは当たり前だろ。悪いかよ。
が、月は笑顔で
「ちと上等すぎるもてなしぢゃのう」
「ふむ、そうだろうか?」
「
「ただの
「ほう、さすがに鼻が利くようだ。その通り。遠い異国の茶を取り寄せてもらった。まず最初の礼だと思ってくれるといいのだが。警戒せずとも同じ道具で
そう言うが早いか
生憎と私は紅茶、というものを見たのがはじめてで異国のものだろうが自国のものだろうが味の想像もつかない。しかし、月は目配せして薄く笑いそのまま飲みはじめる。
まあ、尻込みし続けてもどうしようもないのでそっと
私と月は気にせず普通に飲んでいたけど。もしかしたら貴族の間では飲み食いするのを見せるのは
でも、両陛下は混ぜて飲んでいる。もしかして私が気を張らないでいいように毒味してくれたのだろうか。……なんか申し訳ないが、紅茶を半分飲んで
もう、もうお礼
「その方は、
「……別に。嫌がらせ半分、御守り半分で」
「嫌がらせ、というと、その方の生まれた
「桜綾様から?」
「およその事情は聞き及んだ。できればもう少し
それで招くのにこんな日数がかかったのか。
それと桜綾様たちにも。こんな
と、いうか息子っていうと
そこから誰を探したかったのかわからないが、親に迷惑をかけるほどってことはよほどの思い入れがある者なのだろうか? よくわからないけど。私にはそういうのない。
実の親ですら興味も関心も寄せるに
「後宮で、のう? 熱心になる、以上にどうやらぬしらの言いようからしてよほど
「それが、これまで見たどんな娘や
へえ。あのアホ法案を声にしたという点で好けない皇太子がそこまで腐心、というとちょい聞こえが微妙だが月が言うようにそこほど執着するってどういう女だったんだ?
気にはなるが、訊こうとは思わない。むしろ皇太子、という単語を早いところ余所に放り投げてしまいたいので、私は月に付き合ってもらい練習した丁寧な言葉を使った。
「では、礼の茶も頂戴しましたし。こ」
「それでは、本題の礼を申そうか。静よ。その方の偉大な力を
「そ、れのなにがお礼に……?」
「もしも、受けてくれるなら
「ほほう。それで将に、のう?」
「その方の才能を腐らせるはもったいない、というのもあるにはあるが、どうだ?」
どう、って。どう答えろと?
しかし、な。それにしても禁軍の将を任せたいと来るとは予想外。てっきりここに来る道中で見た
予想の斜め上をいく展開だ。と、いうか私なんかに将軍なんて務まるんだろうか。そこはかとなく疑問だ。そして、そもそもの話、女が将軍であるのを他の
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