はあ、気が重たいが、とっとと済めよう
三〇話 気は重たいが、両陛下へ会いにいこう
「
「多分、大丈、夫……?」
「なんぢゃ、自信持て。
なにそれ、生き地獄? この鬼面の下にあるのなんて醜い鬼娘の穢れた顔だけだ。
他にはない。でも、妙な噂が立つのは。ああいや、だけど外すのは
で、鬼面をつけたまま着飾っている私に一瞬淋しそうな表情を浮かべたがすぐにっこりして私の肩に手を置いてきた。これつまり、励ましだろうか? 頑張ってね、とか?
やはり面は外した方がいいんだろうか。しかし多くの人間、へたな街よりもひとが密集しているこの
彼女の綺麗な緑の目が、いつも優しい、砂漠地帯にあるとされる水と共に溢れる
彼女はあの
そう思い切れない
信じられない。信じてしまうのが怖い。気持ちを寄せただけ返されないのが、どんなにこちらが慕ってもその気持ちを汲まれない、というのはとても
それに、第一私が桜綾様のような
今は、命の恩人として
そんなことわかっている。
そんな私が、ここまで好待遇でもてなされたのはあの人喰い鯉、
高貴な
「じゃあ、車をまわさせますね」
「すまんのう、我が
「誰が主だ。だいたいなんでついてくんだ」
「おやあ? ひとりでいけるのかえ~?」
「……ぐ」
「ほほ、そうぢゃろうが。意地張り娘めが」
見抜かれて先回りで
月がついてきてくれるのは心強い。もしもの時にはすぐ後宮からであろうと逃がしてくれる、と言ってくれた。そういう意味でもついてきてほしい。なにせいくのは
後宮より
私ひとりの
ただでさえ、鬼妖に魅入られた穢れを宿す、だのなんだの無慈悲に
まわりが呼吸するのと同じ域で私を罵るから私はそれに反抗することにさえ無意味さを覚えていって、邑人たちが私を
息を吸う。吐く。罵る。この一連の、独特すぎる呼吸を聞いて育った私にとって他人はそういうものという認識だけが育った。私を卑しいと謗るてめえらが卑しいだろう?
そう、心の中で舌をだしてきた。心の底からすべて貧しかったあの邑での認識が捨て切れない私は桜綾様が手配してくれた馬車に月と一緒に乗って、窓の外に手を振った。
主人を平然と「てめえ」呼ばわりする私は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます