二七話 ここ最近、私は悪寒を覚えてばかりだ
「引っ越し先は
「はあ。つまり皇太子の為に新調すると?」
「ええ、まあ。そういうことね。ふふ、
「それでも、アホ
「ああ、ええ、それね。実はあの法案は殿下が原案をお考えになったわけではなくて
なんだ、それ。じゃあ、私が今まで抱いてきた感情はその誰かに向ければいい? それとも押し切られた、結局声をあげた皇太子に恨みを抱けばいいのか? どうなんだ。
その
でも、な。正直な心境は複雑だ。皇太子は悪くなかったと突然言われたって心が追いつくわけない。けど、だからこそ桜綾様は微笑まれたんだろう。私の複雑さを
優しいひと、だ。
冷静でもあらゆる情が深い彼女の不思議さは金性と火性が混ざりあってできたか。
私がふむふむ、と考えていると桜綾様が今度はにっこり笑ってとんでもないことを言ってきた。もう半分どころかほぼ忘れ去っていたことを思いださせてきた、とも言う。
「陛下がそろそろ落ち着いただろうから、ってことで明日、
「ごふっ」
噴きだしてしまった。柱にもたれている
なんて、つきたい悪態もつけないでいる私は当初着ていた服をぎゅ、と無意識で握りしめたが、桜綾様がもんのすっごーくいい笑顔をしたので背を悪寒が一撫でしていく。
「大丈夫よ。きっと似合いますからね」
「……」
いやな予感とは、予知してはいけない。そう私はこの日ほど深く胸に刻んだことはきっとあとに振り返ればこの時だけだっただろう。なぜ、ひとは先を予見できないのだ?
そう私がしみじみ感じてしまったのは内緒でない内緒にしてしまいてえ。いっそ。
だって桜綾様が
これ、ちょっとどころかかなり着るの勇気がいるんだが。第一、こんな女性らしい貴族が着る服を私は見たこともない。こんな綺麗な衣装仕立ててもらってよかったのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます