一五話 それぞれの出身と昔の話を少し
「
「訊きたきゃあてめえから言うのが
「まあ。ふふ、そうね。私は
「? どういう」
「船乗りの方たちって根はいいひとなんだけど言葉が海の荒波のようなの。お母様は下品だって言っていらしたけどお婆様は笑って聞き流していたわねえ、そういえば……」
そういえば、と言葉を切って
でも、
「私は北の奥地の
「え?」
「私が生まれた年は大凶作だった。だから飢えを満たす為、山の実りをいただく代わりに
「ハ、オ? その方がどうやって」
「簡単。私と一体になって飢えと渇きから逃がしてくれた。でも同時に宿った水を
……。しん、と車内に沈黙が落ちた。ちと、喋りすぎた? いや、ちょうどいい。
これで桜綾様も
悪影響を訴えてくれ。皇帝に皇后に。それとついでにクソな法案を通した
これでいい。これがいい。後宮からだしてもらえたらまた、いくあてもなく旅をするだけでこれまで通り。そして、いつかどこぞで野垂れ死ぬ。……私は。月はまだ当分生き続ける筈。なにせご自慢なさるほど
私の、寿命は人間のそれだと信じたい。例え、日々健康さを積んでいても、それはまだ私が十代の、十八の娘だからだ。
そんな化け物みたいな私が、
もしかしたら、
……ん。迫害は慣れている。だから問題はそこじゃないんだ。私は、きちんと死なせてもらえるんだろうか? あの時、浩は「生きたいか?」と
「静? 大丈夫? 震えているわ。ごめんなさいっそんな、あの……そんな恐ろしい
「ああ、そういうの
「静……、無理しないでいいのよ」
「してねえよ。ただ、未来が不安なだけ」
そう、ふと、不安になっただけ。浩。あなたは私を救ってくれたが同時に呪ったに同じだと知っているよな? だったら、死にたいと思ったら私を死なせるのはあなたの義務だ。あなたに拾われた命なんだから。あなたの手で消すべきだ。そう。そうだろうが?
私が同情要らんと言っても桜綾様は驚きで見開いた目に涙を溜めている。隣では優杏様も震えながら母の手を握っているようだ。はて、私はそんなおぞましい話をしたか?
そこまでの話じゃない、と思う。私は同意を求めて月を見たが九尾の狐は呆れ返った表情で私を見つめ返してきた。なんだよ、と思って主人に対する
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