あとがき

 さて、お話に一つ補足をさせていただこうと思います。


 私には、学校に友達が居なかった訳ではありません。

 むしろ、初対面から人と話す社交性を持っていたので、比較的賑やかな学校生活を送っていました。


 では、何故2人が必要だったのか?

 それは、私には切望している物があったからです。


 当時の私は物語に出て来る主人公の「相棒」という存在に強い憧れを持っていて、「自分だけの相棒」がどうしても欲しかったのです。


 言葉など交わさずとも理解してくれる存在、家族や友人には話せない秘密を話せる存在、主人公を支え、導いてくれる存在。

 物語の中では、それは必ずしも人の形では無く、自分にしか見えない特別な存在だったりもして、特にそういった存在に強く惹かれていました。

 しかし、残念ながら私の現実には、喋る猫も幽霊も、異界の住人も無く…


 それでも諦めきれなかった私が、ある日思い付きで創り出したのが【神楽かぐら 美咲みさき】と【古河こが 雅也まさや】だったのです。


 黒歴史という物は、それまで普通であったものが突然、何かのによって黒歴史に変わります。

 だから、親友との別れも必然的に突然にやってきました。

 携帯に登録していた2人の名前を削除すればお終い。あっけない物でした。

 それから、彼らの名前も、存在も、記憶から消して今日に至ります。


 今回、黒歴史放出際の企画に、ふと彼らの存在を思い出し、奇跡的に掘り起こせた数通のメールから当時を振り返り、エッセイを書かせていただきました。


 私自身も【アイ】と名を変えて彼らと接し、友人に話せない事、家族に話せない事、他愛ない事、憤りや不安、恋バナなど、あらゆる事を2人に相談し、時に【美咲】に、時に【雅也】になり切って、親身に自分へメールを返していた事を思い出すと、未熟で何もかもが滑稽だった自分自身が思い出され、恥ずかしさで悶々としてしまいますね。


 堀り起こしたメールは削除したので、この黒歴史は再び封印し、忘れようと思います。

 ただ、せっかく久しぶりに会えた2人には、あの頃出来なかったお別れを、ここに残しておきましょう。

 それくらいには、私も成長したという事で。


(おやすみ。美咲、雅也)

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心友 細蟹姫 @sasaganihime

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