[KAC20241]新譜冥想

めいき~

しんぷめいそう

天使には三分以内にやらなければならないことがあった。



モノトーンの曲が宙を舞い、ひび割れた額縁の様に視界を軋ませる。


それは、緋色の追憶。




小さな手を伸ばして必死に筆をとり、天には膨大な楽譜が散らばって。



衝動のまま、書いて書いて投げ捨てて。




クッションを紛う、巨大な懐中時計をちらりと見れば一分程すすんでいる。



「世界を描くのに、三分は少なすぎるっ!!」



狂っていくのも、修正するのも時間は足りず。


ただ書き進めて走らせて、もう舞台の生き物に全てを任せてしまおうと。


紙に魔法をかけては、譜面は不協和音に天を舞う。




何故、この様な事になっているのか。


時間を止める事はできず、時間を圧縮しているに過ぎないこの部屋で天使が頭をかきむしる。



「あのポンコツ神め、何が世界を作るのが面倒だから君宜しくだ!それなら時間を止めてから行うのが正道だろうに。杜撰にも、時間を圧縮するだけで丸投げしやがって」



勝手にステータスやらスキルが出来ていくが、天使はそれどころじゃない。

妖精の左目に、バラの花が咲いてはそれが普通になっていく。


夜と昼がひっくりかえって、光と闇の定義すら混沌に混ざっていくのだ。



「人間の作るAIだのコンピューターだって、もう少しまともに動くわよ」



その世界で生きるものは知らないんだ。世界は手書きで出来ていて、かけた魔法が適当だから大暴走の果てに勝手に固まったものが固定されて法則になってるだなんて。



「教えてやったところでどうにもならないわ、書いている私だって修正分をつっこむので手いっぱいなんだから」



懐中時計の針がかちりと進めば、私の胃が痛む。



なんと、皮肉な絶望だろう。



それでも、誰かの明日の為に。


私は、世界の譜面を書き続けよう。


そう言う風に、まとめようとした所に新たに問題が発生する。


「天使長っ!ラグナロクで楽譜が燃えました!」

「もう、帰りたい!!」


「天使の家は天界で、ここ(現場)です」

「なんでや、ここ地獄やん!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

[KAC20241]新譜冥想 めいき~ @meikjy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ