戦闘記録2 ガキどもの抗争

 とある美しい都市の一角で、組織同士の抗争が行われていた。


「行け行け!押し切れ!」


「負けるな!あいつらを叩き潰せ!」


 あらゆる攻撃が飛び交う戦場と化しているここは、地上に作られた名もなき超巨大都市。現代人が考える近未来都市とも言える場所で、年端も行かぬであろう子供たちが各々も武器を持って縄張り争いをしていた。



「チッ!やっぱり効かないよねぇ!」

「当然だろが!」


 とある前線のいた獣人族の少女が能力を使い、眩い光の電撃が周囲を包み込むが、その程度でやられる子供たちではない。その少女を仕留めるために、人族の少年がナイフで素早く斬りかかる。


「おまぇ!毎度毎度邪魔して!」

「大人しく斬られとけ!」


 少女は避けると同時に放電を繰り返すが、受け流され、鋭い追撃と反撃の手が相殺と言う結果を生み出す。


「バカすか放電するのはやめたのか?猫ちゃんよ!」

「私は虎だ!バカにするな!」


 上下左右 変幻自在に斬撃を繰り出し続ける少年だが、少女も負けじと精密に操作される電撃と体術で対応する。それによる光と、素早い攻防が合わさり、目に負えないほどの速度で殴り合う二人。どちらも高度な戦術、戦略によりほぼ完ぺきに相手の攻撃に対処出来ていた。


「でも甘いんだよ」

「嘘ッ!?」


 しかし近接戦では少年に分があった様で、拮抗しているように見えた戦況は、ちょっとした差のほんの一瞬で傾く。それによりナイフが胸に突き刺さろうと少女の胸毛を掠めたところで空を斬る。


「速くなったな!」

「ッ!?」


 電気で強化した動きで距離を取るが、どこからともなくライフルによる銃撃を受け、その対処のために気を散らした次の瞬間には、目の前にナイフが迫っていた。


「ここは戦場だぞ!援護も遊撃も巻きぞいもいくられもあるんだ!目の前の相手だけ気にしてりゃいいわけじゃないんだよ!」

「そう言うお前はどうなんだ?」


 スッと現れた相手組織の遊撃者が、少年に短剣を突き刺す。


「出来るに決まってんだろ!」

「だろうな」


 無動による防御で肌を掠めるだけに終わる斬撃。それは少女にも言え、大した傷を与えられずに次の行動をする。


「来いや!」

「言われなくとも!」


 少年が横にズレて応戦にかかる。そこに少女が乗り、


「俺は……こっちか」

「流すか!」


 遊撃者は別の遊撃者の攻撃を受け流し地面に叩き着け、追撃の拳も対処しきってそちらの戦闘に入っていた。



「やるなお前!透人族の癖にすり抜けねぇなんて!」

「幼児族か。元気がいいこった」


 短剣の透人族と、自身と同程度の長さの先が少し曲がった鉄パイプのような武器を持つ幼児族との戦いだ。


「お?おぉ!?滑る!?」

「なんて威力してやがる……」


 パイプを槍のように突き出し、短剣で受け流された事に驚く。反撃の隙を与えずに連続でパイプを突き振り回すが、何度やっても受け流す際の抵抗が一切感じられないからだ。


「これはこれは!摩擦か!」

「そうだよッ!」


 衝撃まで完全に受け流せていない事から即座に能力を言い当てた幼児族は、瞬きよりも速い族度で間合いを詰めて、引き寄せたパイプによる下からの薙ぎ払いを実行する。


「っと!これは厄介!」

「チッ、効かなかったか」


 パイプはすり抜け、ついでに透人族の背後から飛んできていた水針が飛んできた。それを咄嗟に振り払うが、滑る短剣の反撃を防ぎきれずに、倒れるように回避をしながら片手で体を支えて素早く蹴りを返す。


「すり抜けんな!」

「無茶を言う」


 足を掴まれたが、それを地面に突き刺したパイプを軸に捻り解いて、回転と同時にパイプで殴りにかかった。しかしそれはすり抜けられ、また回転を無視した方向からの奇襲もすり抜けられる。


「逃げんな!」

「そこいると危ないんでな」


 透人族は、何度かの攻防の後、攻撃を防いだ勢いで後方へと下がり、そう言う。その瞬間に視界を埋め尽くすほどの火炎放射が空間を焼き


「ウザったい!」


 幼児族や他の巻き込まれた者たちの振り払いで火は一瞬で消し飛んでいた。だがそれをした瞬間に、待ってましたと短剣が目の前に迫って来ていた。


「ッ!?」

「チッ!」


 逃げる事無く立ち向かう幼児族だが、全身がすり抜け背後を許してしまう。そこに姿勢を低くし、横に倒れるように回避する幼児族を確実に斬り裂こうと短剣を差し向けるが、銃撃を避けるために透過を継続して目の前に帰ってきていた。



「これらから乱戦はやめらねぇな!」

「真っ平御免だ!」


 余波の対処から、第三者の介入の調整、決して不意を突かれないようにする工夫も欠かさず戦い続ける。狭間の住人なら誰もが通る道であり、その反応は様々だ。


「わかんねぇか!?この緊張感がッ!」


 影が差し、巨大化した巨人族に踏み潰される。


「いいんだろうがッ!」


 衝撃で弾き返し、一気に透人族と距離を詰めて空間を揺るがす程の威力でパイプを振るう。


「わかるか!」


 そして抗争は激しさを増し、まさに乱戦と言えるまでになっていた。この戦いがいつ終わるかなど、本人たちでもわからないが、多分トップがどうにかするだろう。



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