狭間世界

@batorumania

戦闘記録1

 この世界にはよくありよく見る光景である、とある廃墟広がる広めの街頭で、様々な種族と武器を持った子供たちが物陰に隠れて戦闘態勢に入っていた。


「へ~、やるじゃん」


 ボロッちい格好をして昼間っから酒瓶を片手に、囲まれた事に対し呑気に反応するのは、武具を生み出す種族である武具族の一般成人男性、ホームレスの宮武さんだった。等級は三級最上位と一般人の中では最強ではないにしろ結構強い方で、その立ち姿には目立った隙は見えない。


「いつもみたいに真正面から来ないのか。随分と学習したな」


 そう言い終わった瞬間に銃声が鳴り響き、音速の何百倍の速度の弾丸が宮武さんのこめかみに吸い込まれるように撃ち込まれていた。



「んっと、でもまだまだな」


 軽くその銃撃を躱し、次の銃撃も気配を消し超速接近してきた子供たちも酒を飲みながら軽くあしらう。



「くっ!このバケモンが!」

「やっちまえ!」

「今回こそは勝つ!」


 剣に刀にナイフ、銃器などやそれを高度な科学力や能力で作ったような武器武装に身を包んだ子供たちが宮武さんに向かってそう叫び、次々に攻撃を仕掛ける。その動きは、意図的に連携が取れているとは言い難かったが、個々が仲間の邪魔にならないように、隙を埋めるように臨機応変に動いていた。


「中々楽しめるな」

「黙れや!」

「そうだそうだ!」


 楽しそうに片手の徒手空拳で相手する。その技量と立ち回りは凄いの一言であり、超人的な動きをする子供たちの動きは完全に読まれ、紙一重での回避と反撃を可能としていた。


「おっと酒が零れる」

「余裕こいてんじゃないよ」


 細剣を持った希薄そうな透人族の少女が、地面から浮かび上がって刺突を放っていた。それをふらつきながら完璧に躱し、酒を飲む。


「舐めやがって!」

「その程度の実力しかないの、お前らは」


 割り込んで来た幼児族の男の子が素早く上段から斬撃を放ち、即座に首を狙って切り上げる。その際に乱斬と言う斬撃を散らす技を使って斬撃の嵐を生み出していた。


「おっとと、あぶね!」


 瞬動と言う瞬間的に速度を上げる技で距離を取った宮武さんは、酒を一気に飲み干し、瞬動で距離を詰めて来た天人族と鉱人族の子供たちの足を、引っかけたり軽く押したりして体勢を崩させる。


「何度も!」

「喰らうか!!」

「一発凌いだ程度でなんだよ」


 体勢を崩しかけた子供たちだが、即座に立て直し地面から金属杭を生やしたり、光の短槍の反撃も放つ。だがそこには既に宮武さんはおらず、気配のする方に急いでガードを張る。


「「ガハッ!?」」


「酒もなくなったし、反撃と行きますかね!」


 だがすでに赤黄色い刀身の刀に斬り裂かれており、傷口が炎上し焼け爛れていた。



「宮武さんが武器を出したぞ!」

「来た来た!」

「負けてられるか!」


 体格がいい巨人族や鬼のような角を生やした頭角族の子供が瞬動で殴り掛かり、隙を埋めるようにスッと手のひらサイズの羽根を生やした小人族が宮武さんの斬撃を受け止めていた。


「一発喰らってみろや!」

「断っとくわっと!」

「撃て撃て!」


 弾かれ後方へ下がりながら猛攻に対処していく。三人が連携を取って隙を埋め合って、援護射撃もあるのにも関わらず、傷が増え体力もなくなるのは子供たちの方であった。


「おらおらどうした?弱い上に技術もないのな!」

「うっせい!」

「黙れよ!」

「クソ爺!」


 子供たちは一瞬で動く瞬動、空間を移動する空動、動きをズラす乱動、動きを無くす無動。他にもこれの斬撃版や打撃版もあり、探知の面でも隙の無い技術を駆使して戦っている。だがそれら合わせて「一般流」と言われる技術は、この世界の住人であればだれでも使える技術だ。勿論、子供たちよりも宮武さんの方が使い手としては上である。


「そこまで年取っちゃいねぇって」


「「「っ!?」」」


 打ち合いの最中で宮武さんの刀身から発生した謎の液体が、飛沫を上げ気化する。それによって酒の匂いが強まり、一瞬で当たり一面を炎上させた。


「クソ!酒刀めんどい!」

「範囲攻撃とはやってくれる!」

「ならん距離だ!」


 傷付きながらも致命傷を避けギリギリで距離を取った三人。そこに他の子供が声をかけ、遠距離から様々な攻撃が繰り出される。それはアサルトライフルやマシンガンの銃撃だったり、手榴弾だったり、炎や風などの能力や種族特性を生かした飽和攻撃だった。



「飽和攻撃とは芸の無い!」


 一筋の戦が世界に引かれ、世界が世界が斬られたような錯覚を引き起こさせる。これは飛斬と空間を切る空斬と言う技を合わせた技だ。これによりすべての技は斬り裂かれ、攻撃が一瞬止むことになる。


「お前のような芸のある技なんて持ってないもんでな!」

「ならよく見て覚えておけ!」


 血肉を操作できる血人族の少年が瞬動で近づき、高速で腕を振る。それにより腕から血管のように血が噴き出て、近くの廃墟ごと切断していた。


「地形の破壊はご法度だろ!」

「なら止めてみろや!」


 少年が続けて攻撃をして血を巻き散らす。それにより地形も建築物も溶けたり斬り裂かれたりしてボロボロになっていた。これはこの世界では、特に廃墟など修繕する者が少ない場所では極力避けた方がいい戦い方であり


「やめろ!」

「ガハッ!?」


 ホンキで攻撃されても文句が言えない事であった。


「クソ!負けッ!?」

「黙って寝てろ!」


 斬り裂かれた胸を肉体を操作し耐えながら修復し、反撃をしようとする。だが伸ばした腕は肩から先ごと斬り飛ばされ、瞬動で超加速された拳から放たれる重撃と言う重く重なる衝撃をくらい炎上しながら吹き飛ばされていた。



「ちょっと失礼、今回は引かせてもらうこともするよ」

「……そうかよ。いつもで遊んでやるが、こういうことはちゃんと注意しとけよ」


 嫌な酒の匂いが漂う空間で、一人のナイフを持った獣人族の少年が立ちふさがり撤退を宣言した。それに気を削がれた宮武さんは、武器を酒瓶に変え、酒を一気飲みしたのちに去っていくのだった。


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