第27話 旅立ちの朝
「シロナちゃん〜またね!」
「また会おう!」
「ありがとう〜雪花姫さま!」
「また来てください!」
俺たちは、サリア、アレキサンダー、町のみんなの見送りを受けながら、フォルテを出発した。
『意外とあっさりしたお別れだったな』
「一生会えないわけじゃないから、このくらいでいいなの」
『そうだな。じゃあこのまま北東へ向かうぞ。目指すはイースタン地方だ!』
このまま一直線でイースタンに向かう。ここから馬車でも4、5日かかるんだが、俺なら一飛びだ。
まぁ、具体的にイースタンのどこにいくのかは決まっていないがレイナが資料室を全て解析してもらってるから、いざとなればレイナに聞けばいいだろう。
『じゃあ、しっかり捕まってろよ?』
「了解なの!」
形状変化でボードになる。そして、シロナがひらりと乗った。
「そういえば氷花姫って私のことなの?」
『そうだろうな。シロナにもとうとう二つ名がついたな』
氷花姫か、いいじゃないか。氷塊魔術メインで使っていたから、印象付いたのかな?
「氷花姫……かっこいいなの!」
『あぁ、とってもシロナに似合ってると思うぞ』
「えへへ」
どこかの国のお姫級の可愛さだからぴったりだ。
『レッツゴー』
「いぇーい!」
どんどん飛ばしていくぜ。このまま突っ切っていくぞ!
普通だったら吹き飛ばされているがそこは、魔術の出番だ。風魔術で気流を操作し、衝撃と風圧を弱める。
『どうだ?』
「心地いい風なの」
気持ちよさそうに目を細めるシロナ。尻尾もフリフリさせていて、とてもかわいい。
障害物も一飛びだ。空路だから、障害物なんて関係ない。
「マスター、鳥なの」
『あれは魔獣かな』
「じゅるり……焼き鳥」
『いや、さっき朝ごはん食べたばかりだろ』
「まぁ、昼ごはん用に何匹か狩るか」
そして、時折魔獣を見つけては狩り、ドローンを活用しノンストップで回収。これでいちいち止まる手間が省ける。無駄がなくてバッチグーだ。
ただ、ずっと念動を使い続けるのは疲れてきた。流石にスキルの維持は精神が削られる。
『自動運転があればいいのにな』
『了解しました。オートモードに変更し、一時的に体の操作権を個体名:レイナに譲渡します』
『もしかして、レイナが代わりに飛んでくれるのか?』
『最適空路で目的地まで移動します』
『さっすがレイナだな』
***
「お腹すいたの〜」
『そろそろ昼食にするか』
「やーきとり! やーきとり!」
『はいはい。わかってるよ』
鳥系魔物解体し、一口サイズに切る。収納から調味料を出しいい感じで調合する。料理スキルが地味に便利なんだよな。持っていて損はない。
塩&タレをつけて、焼いたら出来上がりだ。
「いただきますなの」
『どうだ?』
「タレが濃厚で美味しいなの。塩もシンプルでどんどん進むなの!」
ずっと俺に乗ってただけで、動いてないのによくそんなに食べれるよな。一体どこに食べたものが入っているのか……
昼食を食べたら、また移動だ。
ここら辺はフォルテとは地形が風変わりし、森林地帯が途切れて平原が続いている。
結構移動してきたんだな。
『もうすぐでイースタンに入ります』
『えっ、もうそんなに進んでたのか』
「流石マスターなの!」
『今晩はどこかに泊まるか』
『グライン村が一番近い集落です』
「じゃあ今日はそこに泊まるなの!」
『レイナ、案内よろしく』
『お任せください』
***
綺麗な山吹色一色に染まった稲穂。風が靡くたびにサーと音を立てている。どこか懐かしさを覚えるとても綺麗な風景だ。
「わぁ、でかいなの」
『確かに広いな』
「全部お米……ゴクリ」
お、人がいるな。収穫しているようだ。
「すみませんなの。宿を探しているんですけど」
「旅の人かい?」
「フォルテから来ましたなの」
「まぁ、サザンからわざわざ、こんな小さい子が……何日馬車に乗って疲れてるだろう。宿なら村のギルドの隣さ。行けばわかるよ」
「ありがとうございましたなの」
「とりあえず、宿確保できたなの」
『まさかの1日でイースタンまで来れたな。あのおばさんは勘違いしてたけど』
人口も120人ぐらいで、さほど村の規模は大きくないがしっかり冒険者ギルドもあるようだ。フォルテの冒険者ギルドよりはこじんまりしていた。
『少し顔出してみるか』
「こんにちはなの」
「はいはい、いらっしゃーい。あれ、見ない顔だね? なんの御用かな?」
え、別に何か用があって入ったわけじゃないんだけど。ちょっと覗くぐらいのつもりだったんだが……正直にいうのもちょっと気が引けるなぁ。
『そうだ! 途中で狩った魔物の素材とか売ろうぜ』
「これを買い取って欲しいなの」
収納から素材を出す。それを見たおじさんは目を見開いて驚いた。
「一体どこから出したんだい? それにこれはDランクの魔物じゃないか。これ本当に君が?」
「そうなの」
「う〜ん」
やっぱり疑われるか。まぁ見た目はただの美少女だし、仕方ないか。
『シロナさん、見せておやり』
「ふっ、了解なの」
「はいこれ」
「これは、冒険者カード? しかもA級!? ハハハ、よくできてるなぁ……本物じゃないよな?」
おじさんは奥にある、認証用の水晶にかざす。一応偽物かどうか調べているみたいだが、まぁ本物のわけで。
「あれ? 反応してるだって! もう一回やっても……反応してる! まさか本物のAランク冒険者?」
「そうなの」
「なんだってぇぇぇ!」
「うるさいなの〜」
話を聞くところによると、どうやら時々訪れる商人から、新たなAランク冒険者が現れたとの噂を耳にしていたらしい。
「曰く、白狐族の少女で、突如フォルテの街に現れ、わずか数ヶ月でA級にまで上り詰め、ガーディアンとも渡り合ったほどの強者。曰くその姿は、まるで雪花の様。ギルマスをも魅了させるほどの美少女。そこからついた二つ名は雪花姫」
どうやら結構シロナのことは広がっているようだ。強くて、めちゃくちゃ美少女なのもあってる。だが、ギルマスを魅了させるって……もしかして酒で酔っ払った時のことか?
「雪花姫! かっこいいなの」
『どちらかというとかわいいじゃないか?』
「かっこよくてかわいいなの」
「失礼しました。まさか、雪花姫様だとは……」
「大丈夫なの。それよりも買取をお願いするなの」
「少々お待ちを」
「鑑定できました。ではこちらが1000Gです」
「ありがとなの」
『じゃあ、宿に行くか』
いつの間にか、アーティファクトに転生していていました~ケモミミ少女と共にロストテクノロジーを求めて旅をする~ 春夏秋冬 @syunka_syutou
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