三分以内にやらなければならないことを忘れた

三国洋田

第1話 なんだっけ?

 俺には三分以内にやらなければならないことがあった。


「ような気がする」


「いきなり何言ってんのよ? 訳が分からないわよ」


「俺には三分以内にやらなければならないことがあったような気がする」


「そうなの? なら、早くやったら?」


「それがなんだったのか思い出せないんだよ」


「そうなの」



「忘れるくらいなんだから、たいしたことじゃないんじゃないの?」


「いや、なんかものすごぉく重要なことだった気がするぞ……」


「なら、なんで忘れちゃったのよ?」


「さっき突風で大型トラックが飛んで来て、激突してしまったんだ」


「なんでそれで生きているのよ!?」


「体が丈夫だからだな」


「それ、丈夫どころじゃないでしょ!? 人間を超えているわよ!?」



「というか、もう三分っているんじゃないの?」


「ああ、まあ、確かにそうかもしれないけど、気になるから思い出したい」



「三分ならカップラーメンを作っていたとか?」


「それは三分以内ではないだろ」


「それもそうね」



「あっ、思い出した!」


「なんだったの?」


「と思った瞬間に、忘れた!」


「器用なことするわね!?」



「うーむ、どうすれば思い出せるのだろうか?」


「さあ? どうすれば良いんでしょうね?」


「あっ、そうだ!」


「何よ?」


「もう一回、同じことをすれば思い出すって、どこかで聞いたような気がするぞ!」


「ええっ!? そんなの迷信でしょ!?」


「いや、それは分からないぞ! よし、ちょっとトラックにぶつかって来る!!」


「迷惑だからやめなさいっ!!」



「じゃあ、どうすれば良いんだよ!?」


「どこかにメモを取ってないの? スマホを見てみたら?」


「それもそうだな」


「スマホも無事なのね。大型トラックが激突したというのに」


「こいつも丈夫だからな」


「そうなの……」



「あっ! あった!! これだ!!!」


「なんだったの?」


「今日の午後三時までに、時限爆弾を解除しなければいけなかったんだった!」


「爆弾!?」


「ああ、それも地球を粉々に吹き飛ばす威力のあるヤツをな」


「ええっ!? ナニソレ!? なんでそんなの存在するのよ!?」


「いやあ、思い出せて良かった。それにしても、なんで三分以内だと思っていたんだろう? トラックのせいで記憶が混濁していたのかな?」


「そんなのどうでもいいわよ!? それよりも、いま、二時五十九分よ!?」


「ええっ!?」


「しかも、五十七秒よ!?」


「三分じゃなくて、三秒だった!?」


 その直後、地球は爆発した。


 めでたくなしめでたくなし。


 おしまい。

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三分以内にやらなければならないことを忘れた 三国洋田 @mikuni_youta

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