御嫡男様には三分以内にやらなければならないことがあった

@curisutofa

御嫡男様には三分以内にやらなければならないことがあった

御嫡男様には三分以内にやらなければならないことがあった。


死之舞踏トーテン・タンツ。ドサッ』


『これで宜しいでしょうか?。父上』


『素晴らしいですよ。三分も与える必要はありませんでしたね』


『有難う御座います。父上♪』


帝国の貴族諸侯であらせられる城伯ブルク・グラーフ閣下として、御領地と領民を御治めになられていられます父上が、長男の私と他の兄弟姉妹ゲシュヴィスターを全員集められましたが。唯一父上から根元魔法の素質を受け継ぎし御嫡男様に対して、三分以内に狩人が罠で生け捕りにしたベーアの息の根を止めるように御命じになられましたが。御嫡男様は三十秒も掛からずに、即死魔法である死之舞踏トーテン・タンツにてベーアを仕留められました。


『唯一私から根元魔法の素質を受け継いだ貴方には、家督と領地と爵位を継承して、当家の次期当主として家臣団を率いてもらう必要があります』


『はい。父上』


私は父上の長男ですが、根元魔法の素質を受け継がなかった時点で、城伯ブルク・グラーフ家の跡継ぎからは外されています。


『さて。当主には天から授かりし根元魔法の素質を扱う以外にも、時として難しい決断を下さねばならない事もあります』


父上はそう仰せになられますと、執事に目配せをされまして。城館で働いている、黒髪シュヴァルツ褐色ブルネットの肌色をしている、女性奴隷労働者スクラーヴェン・アルバイテリンの侍女を連れて来させました?。


『この不逞ふていやからは、奴隷身分の所有物に過ぎない身でありながら、城伯ブルク・グラーフの爵位を持つ私の装飾品を盗み出そうとしました。当主となれば領主裁判権を行使して、このような咎人とがびとを裁く責務も負います。貴方が正しいと思うように裁きなさい』


『はい。父上』


御嫡男様は父上に対して恭しく深々と御辞儀を行われましてから、小刻みに身体を震わせている女性奴隷労働者スクラーヴェン・アルバイテリンの侍女の様子を観察されますと。


『盗みを働いた動機は何ですか?』


自らの生殺与奪の権利を握る御嫡男様に対して、黒髪シュヴァルツ褐色ブルネットの肌色をしている侍女は、声を震わせながら。


『も、申し訳ありません』


死之舞踏トーテン・タンツ。ドサッ』


御嫡男様は冷ややかな眼差しにて、即死魔法で命を奪った侍女の亡骸なきがら一瞥いちべつされまして。


『私は盗みの動機を尋ねたのです。謝罪は求めていません』


御嫡男様の反応に対して、父上は満足気な笑みを御浮かべになられまして。


『相手が女性奴隷労働者スクラーヴェン・アルバイテリンでも、三分と掛かりませんでしたね。誇りに思いますよ♪』


『身に余る御言葉で御座います。父上♪』


父上は御自身の跡継ぎは御嫡男様であると、長男の私と兄弟姉妹ゲシュヴィスターを集めて明確に示される御方ですので。城伯ブルク・グラーフ家の家中は分裂する事無く平穏無事でいられます。

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