3分でできること。

月乃兎姫

第1話

 カップラーメンができるまでには三分以内にやらなければならないことがあった。それは付属されている液体スープをカップラーメンの蓋の上に置き、常温まで戻すことだ。これは液体スープにおける、油または脂に由来するものである。


 それというのも、油は常温では液体で注ぎやすいのだが、冷えると固まりダマとなってしまう。特に動物系のもの……鳥脂(いわゆるチー油)や牛脂(いわゆるヘッド)とも呼ばれるものが主であり、これがまた香味油としての役割を担っている。


 一般的にカップラーメンや袋ラーメンに付属されている【|香味油(こうみあぶら)】とは、そのまま読んで字の如く、味と共に香りを加えたもの。それまでのスープ付属の油とは異なり、別付属とすることで温かい湯気とともに、香りを惹き立てている。もちろん粉または液体スープにも、豚や鳥を始めとした油は含まれているのだが、純粋に油だけを抽出したものは、食す側にとって分量を調整しやすくもある。


 一口に【油】と言っても様々なものがあるため、また人により好みも異なるため、好き嫌いがハッキリ別れている。また、水と油との比重の関係性から、必ずスープ上澄みで、しかも最初の一口目からその味と香りを感じる性質上、商品価値としても極めて購買意欲に直結することとなる。


 一度目は物珍しさから、しかし二度目は前回食べた味に左右され、三度目以降はそれこそファンでもなければ、まずリピート購入することはないだろう。だからこそカップラーメン各社はスープや麺、具にこだわり、そして香味油に力を入れているわけだ。


 油とは、それ即ちカロリーである。添加することにより、スープに適度なコッテリ感と甘さを演出してくれるわけだ。脂と甘さとは、誰しも分かり易い刺激である。これがなければ、どんなに美味しいカップラーメンであろうとも、美味しいと言う人は少ないと思う。逆をいえば、脂を入れることで味を誤魔化せることになるわけだ。

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