RUN AWAY

sorarion914

明日へ向かって

 どうして、こんな事になったのだろう……


 そう思いながら、俺は必死にハンドルを握っていた。

 そして幾度も反芻する。

 特にはしていないはずだ。

 誰にも見られてはいないし、誰にも気づかれていない。

 証拠は一切残さずに立ち去った。

 いつも通り、完璧だ。


 ――なのに。


 俺はミラーで背後を確認した。



 背後にピッタリと付いてくる。

 白いバイク。


(白バイだ……)

 俺はスピードメーターを見た。

 制限速度内で走行している。捕まるいわれはない。車間距離だって維持しているし、信号無視もしていない。歩行者妨害だってしていない。

 なのに……


 俺は焦った。

 サイドミラーに視線をやって背筋が凍る。

 ……一台じゃない。

 見たこともない数の白バイが、群れを成して走ってくるではないか。


 まさか――もうバレたのか!?


 鼓動が跳ねて心拍数が上がる。ハンドルを握る両手に汗がにじんできた。

 白バイは一定の距離を保ったまま、背後を付けてくる。

 まるで、『いつでも捕まえてやるぞ。逃げられるものなら逃げてみろ』と言ってるようだった。

「クソっ!」


 捕まってたまるか!


 俺はアクセルを踏み込んだ。

 車がグンッと加速する。周囲の車より、明らかに速度が上がった。

 その時、背後を走る白バイの赤色灯が光った。

 それを合図に、複数の白バイの赤色灯も回転し始める。

 俺は速度を緩めることなくアクセルを踏み続けた。

 前方の信号機が赤に変わる。それでも、俺は突き進んだ。

 その瞬間、背後でサイレンが鳴った。

 一台が鳴らすと、それに呼応するように他も鳴り出す。白バイの群れが一気に加速して近づいてくるのが分かった。


「バァカ、捕まるもんか!!」


 俺はスピードを上げたまま、赤信号の交差点に突入した―――









 ――後日。その時の様子を見た老人は、こう語ったという。






「あの日は駅伝があったんですよ。毎年たくさんの白バイが走っているのを見るが……あの時はさながら、


 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れのようだった」――と。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

RUN AWAY sorarion914 @hi-rose

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ