その漢、バッファロー・小五郎

深川我無@「邪祓師の腹痛さん」書籍化!

バッファロー・小五郎は眠れない


 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが、夜の花街を蹂躙する。


 一夜の愛を求めて、塀の外からやってきた来た不埒な者共を、バッファロー達は無慈悲に突き飛ばしながら街を巡る。

 

 ここは神聖大和の夜の顔、その町の名はNEO歌舞伎町。




 ことの発端はと名高いNEO歌舞伎町の南地区にあった。

 

 南地区の露店街にはバッファロー肉の串焼きを供する店がある。


 そこの店主こそが頑固一徹、本場アメリカのBBQソースを守り続ける元日系アメリカ人、名をばバッファロー・小五郎という。




 どうやらその漢が誤発注をやらかしたらしい。

 

ナマバッファローを二千お願いシマース!!」

 

「てやんでえべらぼうめい……!! バッファ二千だと!? 死にてえのかコノヤロウ!?」

 

「HAHAHA!! ワタシプロ!! ご心配には及びまセーン!!」

 

「お前さん……!! なかなか粋だねぇ……任せろ!! ですぐ駆けつける!! ブチッ……」

 

 

 ハテ? トラック? 何のことデスカ〜?

 

 後の聴取で発覚したこのやり取りだったが、バッファロー・小五郎は一抹の不安はあったものの深くは考えなかったという。

 

 卸業者も同様で「俺はあのメリケン人の漢気に惚れた」と語ったそうだ。

 

 

 そんなわけで、NEO歌舞伎町は今まさに崩壊の危機に瀕しているとういうわけだ。

 

「Oh〜NOoooo〜!! このままではこの街オシマイで〜す!! 誰か止めてくだサ〜イ!!」

 

 先頭のボスバッファローの首にしがみつき、二千頭の濁流を背後に感じながらバッファロー・小五郎が叫ぶ。

 


 ふと視線を前に移すと、少女が青い顔で固まっていた。

 

 食料品の入った紙袋から、オレンジが一つこぼれ落ちる。

 


「ホーリーシーット……!!」

 

 バッファロー・小五郎はそう叫ぶと、覚悟を決めてボスバッファローの目を殴りつけた。

 

 その痛みに怒り狂ったボスバッファローが激しくを首を振りバッファロー・小五郎を振り回す。

 

 なんとかしがみついていたバッファロー・小五郎だったが、とうとう天高く吹き飛ばされてしまった。

 

 マミー……

 

 ダッド……

 

 本場アメーリカのBBQソース……

 

 僕、守れなかったDEATH……

 


 そっと開いたバッファロー・小五郎の目に映ったのは、自身を迎えに来た天使……


 ではなく。

 

 濃い無精髭を生やし、目にはドぎつい紫のアイシャドウを塗りたくった漢女侍オカマザムライの満面の笑みだった。

 


「自分の危険も顧みず、バッファローに殴りかかるなんて……あんた……」



?」


 

「Gyaaaaaaaaaaaaaaaa!? MONSTER!?」

 


「誰がモンスターじゃい!? 超絶べっぴんのオカマザムライじゃろがい!?」

 

 オカマザムライの浮かべた鬼の形相にバッファロー・小五郎は気を失いそうになったが、そのとき地上の少女の声が響き渡った。

 

「金ちゃん……!!」

 

 見ると、少女に怒り狂ったバッファローの群れが迫っている。

 

 金ちゃんと呼ばれたオカマザムライはビルの壁に両足を着くと、深く腰を落として囁いた。

 

「しっかり掴まってなさい……!!」

 

 刹那、侍の草履がジャリ……と音を立て、二人は弾丸の様に地面へと飛び出した。

 

 バッファローの群れの前に金ちゃんが着地すると、その衝撃でアスファルトがひび割れる。

 

 金ちゃんはバッファロー・小五郎を少女の方に放って言った。

 

「さくら!! その人と下がってなさい!! ……!!」


 


 すき焼き……!!

 


 さくらは黙って頷くとバッファロー・小五郎に肩を貸して距離を取る。

 

 侍はスラリ……と刀を抜くと、ボスバッファローの目を睨みつけて口元に笑みを浮かべる。

 

「荒ぶる野獣よ。お主に恨みはないが、この街の平和とすき焼きの為……そのお命……頂戴いたす……!!」

 


 角を八の字に振り回して速度を上げるバッファロー。


 対する侍は、頭上で柄を握り、刃を背後に隠すように構えると、重心を深く深く沈み込ませる。

 

 

 ギラリと光るバッファローの角が、金ちゃんの心臓目掛けて襲いかかった。

 

 その瞬間、侍は目をカッと見開き、背後に背負った刀身を袈裟懸けに振り抜き迎え撃つ。

 

 

 剣閃は角を両断し、バランスを失ったボスバッファローは差し出すように右首を前に出す。

 

 

「切り捨て御免……」

 

 その言葉と共に、二の太刀がバッファローの太い首をすり抜ける。


 首を失ったボスバッファローは地に倒れた。


 血溜まりに沈むボスを前に、戦意を失ったバッファロー達の動きも止まる。


 

 野次馬から歓声が上がる中、侍はボスバッファローを肩に担いで振り返った。




「さくら!! 急いで帰るわよ!! 店の皆も誘ってすき焼きパーティ!!」


「うん……!!」

 


「ちょっと待ってくだサ〜イ!! お二人の名前は!?」



 バッファロー・小五郎は去ろうとする二人を呼び止めた。

 

 しかし二人は振り返らず何も答えない。


 それどころかこそ泥のようにそそくさと去っていく。

 

 気配を感じてバッファロー・小五郎が振り返ると、NEO歌舞伎町の住人たちはいつの間にかバッファロー狩りを始めており、狩り場と化した通りに、バッファロー・小五郎の叫びが響き渡った。

 

 


「Oh My GOOOOOOOOOOOD……!! 大赤字デース!! わたしのバッファローを返しなさあああああああい……!!」

 

 

 

 ここはNEO歌舞伎町。

 

 食うか食われるか、弱肉強食の夜の街。

 

 住む人々は、誰も彼も逞しい。

 

 


⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔⚔




ここまでお読み頂き、誠に感謝仕り候…!


これは黄金魂の中で巻き起こる、激しい戦いの一幕にて御座候。




黄金魂〜ゴールデン・スピリッツ〜


本編が気になったそこ御仁…!!


べっぴんさんに色男…!!



是非ともリンクをクリック下さり


黄金色の魂の輝き、その目にしかと焼き付けて…おくんなまし〜!!


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