花は、咲う/祐様

【作品タイトル】

 花は、咲う


【作者名】

 祐


【URL】

 https://kakuyomu.jp/works/16818093073805452885


【ラーメンの種類】

 醤油ラーメン


【あらすじ】

 置屋で働く女の子たちが、馴染みのラーメン屋で再会の約束をします。


【感想】

 ラーメンっていうのは本当に懐の広い食べ物なのだと改めて思う作品でした。


 お話自体は昭和末期の天皇が崩御される間際のただでさえ重苦しい時代。その中で離れ小島の置屋(女の子たちにしかできない労働をさせるお店だよ)に売られた女の子たちの悲喜交々が綴られます。


 タイトルの「花は、咲う」の「咲う」は「わらう」と読み、主に見下した笑いを意味します。そして、時節柄このタイトルを見て東日本大震災の復興ソング『花は咲く』を連想しました。『花は咲く』は皆さんもご存じの通り鎮魂歌です。そしてこの『花は、咲う』もそこに確かにいたはずの「(名も無き)花」たちへの鎮魂であります。


 物語に登場する花は、「少々頭が弱い」女の子として描かれます。頭が弱いので後先考えずに行動し、その結果二度と主人公と会うことは叶いませんでした。お金の管理、そして人を見る目。花は目の前のことを処理するのに精一杯だったのでしょう。そしてそんな花だからこそ、気を遣わずに食べられるラーメンがご馳走だったのだろうなと思います。


 そしてラーメンですが、最高ですね。昔ながらの中華そばで、わかめと葱が入っていて、それでいて透明なスープ。「時々葱が同時に口に入る。その瞬間が、私は好きだ」という描写が本当においしそうで、「ラーメンは中華料理屋のラーメンこそ正義」と考える主催者にとってはもうご馳走です。少しどんぶりが欠けてそうな雰囲気もいいですよね!


 例えばこの花と主人公をつなぐ料理は他のメニューで成立するかというと、そこそこ成立するとは思うんです。でもラーメンは、そこにドラマが既に存在する食べ物だと思うのです。ドラマのある食べ物だからこそ、感情がよく乗っかるのだろうなと思います。これが天津飯とかハンバーガーでもいいのですが、「ラーメン」というのはそれだけで物語性を持つ気がするのです。奥が深いぜ、ラーメン。


 骨太のしっかりした、まるでダシがよく取れそうなお話だと思いました。昨今はハッピーエンド以外は認めない、なんて方もいらっしゃいますがこういうお話を上手に書けてこそいろんなキャラクターが書けるのだと主催者は思います。個人的には大変おいしく頂きました、ありがとうございます。


 ナイス醤油ラーメン!

 ご馳走様でした!

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